検査と技術40巻12号

2012年11月発行

臨床検査のピットフォール

尿沈渣検査のピットフォール―酸性尿で認められた尿酸アンモニウム結晶

著者： 油野友二¹

所属機関： ¹金沢赤十字病院検査部

ページ範囲：P.1391 - P.1394

小児科から依頼のあったある尿検査

　患者：2歳8か月，女児．

　主訴：嘔吐，水様下痢．

　既往歴：特記事項なし．

　現病歴：症例は3～4日続く嘔吐，水様下痢のため当院を受診した．便中ロタウイルス抗原陽性でロタウイルス胃腸炎による急性脱水症と診断され，入院となる．

　入院時検査所見(表1)：血液検査所見ではWBC 11,700/μl，CRP 1.00mg/dl，高尿酸血症(14.1mg/dl)を認めた．尿所見は淡黄色調の強い混濁尿を呈し，尿ケトン体は強陽性，白血球反応・亜硝酸塩反応陰性であった．尿沈渣所見では血球類，上皮細胞類および円柱類の増加はなく，球状，淡黄色の結晶を多数認めた．一部はいわゆる「サンザシ(山査子)の実」様の周囲に棘を有するものもあった(図1)．

参考文献

1) 日本臨床衛生検査技師会(編)：尿沈渣検査法2010．日本臨床衛生検査技師会，2010

2) 岡田裕作：尿路結石の疫学―特殊な尿路結石について．泌尿器外科　3：939-944，1990

3) 加藤祐司，芳生旭辰，佐賀祐司，他：緩下剤の長期乱用による酸性尿酸アンモニウム結石の1例．泌尿器科紀要　50：799-803，2004

4) 清家健作，西田泰幸，山本直樹，他：酸性尿酸アンモニウム結石の1例．泌尿器科紀要　54：689-692，2008

5) 鈴木康太郎，山下雄三，松崎純一：酸性尿酸アンモニウム結石の臨床検討，泌尿器科紀要　56：5-9，2010

6) 鹿野高明，高橋豊，鈴木信，他：ロタウイルス胃腸炎に伴った腎結石陥頓による急性腎不全．小児科　48：1773-1774，2007

7) 座光寺秀典，宮本達也，神家満学，他：ロタウイルス腸炎後に両側尿管結石による急性腎不全を呈した2幼児例．日本泌尿器科学会雑誌　101：29-33，2010

8) 長谷川慶，濱崎祐子，坂井智行，他：胃腸炎の発症後，乏尿，浮腫，高血圧を呈し，急性腎不全を来した1男児例．日本小児腎不全学会雑誌　29：125-127，2009

9) 松永健司，赤澤英樹，武山雅博，他：血液生化学所見からみたロタウイルス感染症におけるケトーシス(感染症)．小児科臨床　59：911-916，2006

10) 松永健司，野並京子，林有紀子：ロタウイルス感染症患児の尿酸排泄率．小児科臨床　62：1887-1891，2009

11) 鹿野高明，簗詰紀子，縄手満，他：ロタウイルス胃腸炎による高尿酸血症．小児科臨床　62：1881-1885，2009

12) 油野友二，川端絵美子，久田幸正，他：糖尿病ケトアシドーシス症例に認められた酸性尿酸アンモニウム尿症．糖尿病　54：411-416，2011

13) 油野友二，松村隆弘，橋本裕之：腎尿路結石を伴わない酸性尿酸アンモニウム尿症を呈したロタウイルス胃腸炎の1例．小児科臨床　64：2367-2372， 2011