文献詳細
文献概要
技術講座 生化学
ドライケミストリー―多層フィルムの科学
著者: 杉原充1
所属機関: 1富士フイルム株式会社神奈川工場イメージング材料生産部FDCグループ
ページ範囲:P.177 - P.181
文献購入ページに移動血液生化学検査の分野にドライケミストリーシステムが登場して約30年が経過し,ドライケミストリーシステムは緊急検査,POCT(point of care testing)だけでなく日常検査にも広く使用されている.ドライケミストリーは,反応に必要なすべての試薬が乾燥状態で組み込まれており,操作やメンテナンスが容易で,水を必要としないという特徴を有する.このため,先の東日本大震災の被災地においてもドライケミストリーシステムは大きな役割を果たした.セルのような容器内の溶液中ではなく,固相中で反応が進むドライケミストリーは反応の進行や測定の方式が液体試薬の方法と大きく異なる.反応にかかわる水分が検体由来のもののみであるドライケミストリーは,給排水設備を必要としないという長所があるが,一方,検体の物理化学的性質の影響を受けやすい傾向がある.そのため,外部精度管理調査などで新鮮検体と異なる試料を測定した際に液体試薬の方法と測定値が乖離する場合があることが以前から報告されている.ドライケミストリーシステムの長所を十分に生かして活用するためには,その特徴をよく理解したうえで使用することが重要である.
参考文献
掲載誌情報