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文献詳細

雑誌文献

検査と技術40巻4号

2012年04月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈微生物〉

マクロライド耐性肺炎マイコプラズマ

著者: 山口徹也1

所属機関: 1川崎医科大学小児科学

ページ範囲:P.300 - P.303

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肺炎マイコプラズマとは

 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)はウイルスなみに小さく細胞壁をもたないといった大きな特徴をもつ細菌である.飛沫を吸入することによりM. pneumoniaeが線毛上皮に付着し,そこで増殖することで感染が成立する.感染により気管線毛上皮を障害し,その剝離や線毛運動の低下をきたすと同時に,菌体成分が炎症性サイトカインの産生を強く誘導することにより,他の細菌感染症と比較して気管支表面に強い炎症反応を引き起こすことがわかっている1).肺炎,気管支肺炎,気管支炎などが多いが,咽頭炎,副鼻腔炎,クループ症候群,細気管支炎なども引き起こすとされている.

 マイコプラズマ肺炎は年間を通じて発生するが,秋冬に患者数の増加がみられる.全年齢層で患者は発生するが,小児では6歳以上に多く市中肺炎の原因微生物の約60%を占める一方,乳幼児には比較的少ない.また成人でも10~30歳代に多く市中肺炎の約10%を占める.潜伏期は2~3週間とされ,およそ2~4週間で抗菌薬治療を行わずに自然治癒することもある.M. pneumoniaeは発病1週間前より咽頭で検出され始め,その感染力は発病時に最大で,その後10日間近くは続くが,呼吸器症状が持続する例でも6週間後には消失するとされる.しかし数か月にわたり喀痰より検出されたとの報告もある2)

参考文献

1) 田中祐士:気管支喘息とマイコプラズマ感染症―気道病変の類似点と相違点.Progress in Medicine 26:784-793,2006
2) 山崎勉:小児科領域の院内感染―マイコプラズマ,クラミジア.小児科 49:714-718,2008
3) Morozumi M, Iwata S, Hasegawa K, et al : Increased macrolide resistance of Mycoplasma pneummoniae in pediatric patients with community-aquired pneumonia. Antimicrob Agents Chemother 52:348-350,2008
4) 成田光生:主として市中感染症で問題となる耐性菌・1 肺炎マイコプラズマ(臨床編).臨床検査 50:927-931,2006
5) Suzuki S, Yamazaki T, Narita M, et al : Clinical evaluation of macrolide-resistant Mycoplasma pneummoniae. Antimicrob Agents Chemother 50:709-712,2006
6) Okazaki N, Narita M, Yamada S, et al : Characterisitics of macrolide-resistant Mycoplasma pneummoniae strains isolated from patients and induced with erythromycin in vitro. Microbiol Immunol 45:617-620,2001
7) Matsuoka M, Narita M, Okazaki N, et al : Characterization and molecular analysis of macrolide-resistant Mycoplasma pneummoniae clinical isolates obtained in Japan. Antimicrob Agents Chemother 48:4624-4630,2004
8) Cherry JD, Ching N : Mycoplasma and Ureaplasma infections. Feigin RD, Demmler GJ, Cherry JD, et al (ed) : Textbook of Pediatric Infectious Diseases, 5th ed. Saunders, Philadelphia,pp2516-2547,2004.
9) 宮下修行,清水大樹,杉生忠昭,他:【マイコプラズマ肺炎up-to-date】マイコプラズマ肺炎の診断.日本胸部臨床 67:561-569,2008
10) 小林寅歹:マイコプラズマ 薬剤感受性測定法と耐性菌 2特殊微生物の抗微生物感受性測定法.臨床と微生物 36:575-580,2009
11) 小児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会:小児呼吸器感染症ガイドライン2011.協和企画,2011
12) 日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会:成人市中肺炎診療ガイドライン.杏林社,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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