icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術40巻5号

2012年05月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈移植医療〉

―移植医療と検査⑨―造血幹細胞移植支援での幹細胞評価について

著者: 国分寺晃12 池本純子2

所属機関: 1広島国際大学保健医療学部 2兵庫医科大学病院輸血部

ページ範囲:P.438 - P.442

文献購入ページに移動
はじめに

 造血幹細胞(hematopoietic stem cell,HSC)は自己複製能(self-renewal capacity)と多分化能(multipotentiality)を有する細胞であり,成人では主に骨髄の中に存在するが,骨髄の中だけでなく,末梢血中にもわずかながら流れている.HSCは,サイトカイン(cytokine)の一種である顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor,G-CSF)などにより,末梢血中に動員することができるが,HSCは臍帯血中にも多く含まれている.

 HSCと成熟細胞(赤血球,好中球,単球/マクロファージ,血小板,リンパ球)の間には,分化段階の造血前駆細胞(hematopoietic progenitor cell,HPC)が存在するが,造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation,HSCT)はそれらのHSCおよびHPCを取り出して,患者の血管(静脈)の中に輸注する方法であり,HSCの起源により,骨髄移植,末梢血幹細胞移植および臍帯血移植に分類される(表1).また,患者とドナー(提供者)の関係による分類から,患者自身のHSCを移植する自家(自己)移植,一卵性双生児(双子)のHSCを移植する同系移植,自分・双子以外の人(兄弟姉妹,非血縁者)のHSCを移植する同種移植がある.さらに近年では,1990年代後半にconditioningを骨髄非破壊的にした骨髄非破壊的造血幹細胞移植(non-myeloablative hematopoietic stem cell transplantation,NST)あるいは治療強度を軽減した骨髄破壊的造血幹細胞移植(reduced-intensity hematopoietic stem cell transplantation,RIST)が開発され,ドナーの免疫担当細胞に腫瘍細胞を攻撃させること〔移植片対白血病効果:GVL(graft versus leukemia)効果〕を目的とした移植方法(いわゆるミニ移植)により,高齢者や臓器障害がある患者へも移植の適応が広がっている1,2)

 このようにHSCTは多様化しており,各疾患の治療戦略の立て方や移植の適応も変わりつつあることから,HSC評価を含めた,移植前後の患者管理の支援において検査部門の重要性が高まっている.

参考文献

1) Giralt S, Estey E, Albitar M, et al : Engraftment of allogeneic hematopoietic progenitor cells with purine analog-containing chemotherapy : harnessing graft-versus-leukemia without myeloablative therapy. Blood 89:4531-4536,1997
2) Slavin S, Nagler A, Naparstek E, et al : Nonmyeloablative stem cell transplantation and cell therapy as an alternative to conventional bone marrow transplantation with lethal cytoreduction for the treatment of malignant and nonmalignant hematologic diseases. Blood 91:756-763,1998
3) Sutherland DR, Anderson L, Keeney M, et al : The ISHAGE guidelines for CD34+ cell determination by flow cytometry. International Society of Hematotherapy and Graft Engineering. J Hematother 5:213-226,1996
Hematopoietic Stem and Progenitor Cells. Current Protocol in Cytometry 6.4.1-6.4.22,1999
5) 日本臨床検査標準協議会,血液検査標準化検討委員会,フローサイトメトリーワーキンググループ:フローサイトメトリーによるCD34陽性細胞検出に関するガイドライン(JCCLS H3-P V1.0).日本臨床検査標準協議会誌 22:18-30,2007
Cells in Pheriferal Blood and Bone Marrow. J Hematother 3:3-13,1994
 haematopoietic stem cell working party. General Haematology Task Force of the British Committee for Standards in Haematology. Clin Lab Haematol 21:301-308,1999
8) さい帯血バンクの技術ガイドライン.さい帯血品質管理基準書(改訂第十二版).(https://www.j-cord.gr.jp/ja/bank/technical.html)
9) 造血幹細胞適合検索サービス.さい帯血バンクに関するサービス内容.(http://search.bmdc.jrc.or.jp/web/pbcmp/HLA C043.html)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら