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文献詳細

雑誌文献

検査と技術40巻8号

2012年08月発行

文献概要

臨床検査のピットフォール

小腸型ALPと血液型

著者: 松下誠1

所属機関: 1埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科検査技術科学専攻

ページ範囲:P.760 - P.761

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はじめに

 血清アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase,ALP)検査は,肝胆道系疾患,および骨疾患のスクリーニング検査として,現在の臨床検査に完全に定着している.ALP活性の基準範囲は血液型によって異なり,BまたはO型で分泌型グループがそれ以外の血液型グループに比べ,約20%高値となることが知られている1).これは,ALPアイソザイムの一つである小腸型ALP(電気泳動法ではALP5と呼ぶ)が,血液型に依存して出現することに起因している2)

 この小腸型ALPには,脂肪食後急激に上昇するノーマル分子サイズ小腸型ALP(normal molecular weight intestinal ALP,NIAP)と,脂肪食前後でその量がほとんど変動しない高分子小腸型ALP(high molecular weight intestinal ALP,HIAP)の2種のアイソフォームが存在し,これら2種のアイソフォームがともにBまたはO型で分泌型の血液型に依存して出現する3).本稿では,健常者で小腸型ALP活性が高値となることに伴う高ALP血症の事例を挙げ,これらのピットフォールの特徴,および注意すべきポイントや確認法について説明する.

参考文献

1) Matsushita M, Irino T, Komoda T, et al : The effect of different buffers and amounts of intestinal alkaline phosphatase isoforms on total alkaline phosphatase activity. Clin Chim Acta 319:49-55,2002
2) Langman MJ, Leuthold E : Influence of diet on the intestinal component of serum alkaline phosphatase in people of different ABO blood groups and secretor status. Nature 212:41-44,1966
3) Matsushita M, Irino T, Stigbrand T, et al : Changes in intestinal alkaline phosphatase isoforms in healthy subjects bearing the blood group secretor and non-secretor. Clin Chim Acta 277:13-24,1998
4) 松下誠,入野勤,神山清志,他:健常者高小腸型アルカリ性ホスファターゼ血症の出現頻度とその特徴.臨床病理 53:383-387,2005
5) 松下誠,入野勤,加瀬瞳,他:アガロースゲル電気泳動法による血液型依存性高ALP血症の確認法.臨床病理 55:19-23,2007
6) 松下誠,菰田二一:アルカリ性ホスファターゼ活性測定における脂肪食の影響と血液型との関係.臨床病理 59:923-929,2011
7) 松下誠,入野勤,菰田二一:脂肪食後血中に分泌されるノーマル分子サイズの小腸型アルカリ性ホスファターゼと唾液中のABH型物質量との関係.生物物理化学 45:37,2001
8) 松下誠:アルカリ性ホスファターゼの測定―血液型を踏まえた総活性とアイソザイム.検査と技術 33:1359-1365,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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