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文献詳細

雑誌文献

検査と技術40巻9号

2012年09月発行

技術講座 微生物

質量分析法による微生物同定

著者: 草場耕二1 福富由美子2 宇木望1 永沢善三1

所属機関: 1佐賀大学医学部附属病院検査部 2佐賀大学医学部附属病院感染制御部

ページ範囲:P.785 - P.791

文献概要

新しい知見

質量分析法には,1940年代からガスクロマトグラフィ法や高速液体クロマトグラフィ法などがあり,低分子の質量の測定は可能であったが,高分子である蛋白質などの質量は測定不能であった.しかし,2002年にノーベル賞を受賞した田中耕一氏らにより1985年にマトリックス支援レーザー脱離イオン化法の原理である「ソフトレーザー脱離法」が開発され1),高分子である蛋白質などの化合物でも分解することなくイオン化することができるようになり,高分子化合物の質量分析が可能となった.この方法を用いて,細菌および真菌のリボソーム蛋白を解析することにより菌種の同定を行う技術が進み,装置および解析ソフトの開発がなされている.

参考文献

1) 田中耕一:エンジニアへのこだわり.日経BP知財Awareness,2005
2) 長谷川武治(編):微生物の分離と同定(下).学会出版センター,1985
3) 駒方和男(編):微生物の化学分類実験法.学会出版センター,1982
4) 鈴木健一郎,平石明,横田明(編):微生物の分類・同定実験法.シュプリンガー・フェアラーク東京,2001
5) 石田康行:マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法による病原体の迅速識別.日本質量分析学会 51:108-113,2003
6) 韮澤崇:超高性能質量分析計による最新アプリケーション.第2回TMS研究会講演会,2010
7) Lottspeich F, Zorbas H : Bioanalytik. 1.Auflage. Spektrum Akademischer Verlag, Heidelberg, Berlin,1998
8) 大楠清文,江崎孝行:感染症における遺伝子解析技術の適応.日本臨床微生物学雑誌 18:163-176,2008
9) 寺本華奈江,佐藤浩昭,孫麗偉,他:リボソームタンパク質をバイオマーカーとしたマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析によるバクテリアの迅速分類同定.J Mass Spectrum Soc Jpn 55:209-216,2007
10) Bizzini A, Durussel C, Bille J, et al : Performance of matrix-assisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry for identification of bacterial strains routinely isolated in a clinical microbiology laboratory. J Clin Microbiol 48:1549-1554,2010
11) 松山由美子:質量分析装置を利用したMALDIバイオタイパーによる微生物迅速同定法.JARMAM 22:27-30,2011
12) Stevenson LG, Drake SK, Murray PR : Rapid identification of bacteria in positive blood culture broths by matrix-assisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry. J Clin Microbio 48:444-447,2010
13) 江崎孝行:病原細菌の系統保存活動から見えてきた菌種の再定義への課題.日本微生物資源学会 24:81-86,2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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