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疾患と検査値の推移
非アルコール性脂肪性肝炎
著者: 小松通治1 木村岳史1 田中直樹12 田中榮司1
所属機関: 1信州大学医学部附属病院消化器内科 2信州大学大学院医学系研究科加齢適応医科学系代謝制御学分野
ページ範囲:P.798 - P.803
文献購入ページに移動従来,脂肪肝の成因の半数はアルコールによるものであったため,禁酒すれば改善する良性疾患と考えられ,臨床の場でそれほど重要視されてこなかった歴史がある.しかし,1980年にMayo Clinicの病理学者であるLudwigら1)が,アルコール摂取歴がない症例でもアルコール性肝障害に類似する肝組織病理像を呈するものを非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis,NASH)と名付け報告した.
以前から糖尿病を有する患者の一部に脂肪肝を呈し肝硬変に進展する症例が存在することが知られており,肥満人口の増加に伴い非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease,NAFLD)やNASHが注目されるようになった.NASHはメタボリック症候群の肝臓での表現型といわれるように,その発症に肥満・インスリン抵抗性などのメタボリック因子が深くかかわっている.しかし,いまだその自然史は不明な点が多く,NASHの発症の説明にはDayらが提唱するtwo hits theoryが幅広く用いられる2).すなわち,メタボリック症候群などによる脂肪肝を第一段階として,その後酸化ストレス・過剰な鉄沈着などによる炎症が第二段階として加わることで,脂肪性肝炎に進行するというものである.また,臨床的にはアルコール摂取の有無で,アルコール性脂肪肝とNAFLDに分け,そのなかでもメタボリック症候群を背景とするものを狭義のNAFLD/NASHとする考え方が広く受け入れられている.
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