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文献詳細

雑誌文献

検査と技術40巻9号

2012年09月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈輸血〉

安全な輸血実施のために―日赤血液センターの体制④―輸血後感染症副作用およびその検査

著者: 内田茂治1

所属機関: 1日本赤十字社中央血液研究所

ページ範囲:P.818 - P.821

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はじめに

 わが国の輸血用血液は1960年代半ばまで,そのほとんどが売血血液により賄われていた.その売血時代には輸血を受けた患者の約半数が輸血後肝炎を発症していたと報告されており1),その後の献血制度への切り替えや新たな検査の導入により,輸血後肝炎の発生頻度は徐々に低下してきた.現在ではさらに,献血受付時の本人確認,問診の強化,最新の血清学検査機器の導入,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus,HBV),C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus,HCV)およびヒト免疫不全ウイルス〔human immunodeficiency virus(HIV)-1/2〕を対象とした核酸増幅検査(nucleic acid amplification,NAT)の実施や新鮮凍結血漿の貯留保管(6か月間)などにより,安全性は飛躍的に高められている(図)2).1999年10月のNAT導入当初は検体500本をプールして検査していたが,翌2000年2月から50本プールに,さらに2004年8月からは現在の20本プールへとプールサイズを縮小し,ウイルスの検出感度を向上させた.しかしながら,輸血による感染事例がいまだに年間10例ほど発生しており,さらなる安全対策が求められている.本稿では遡及調査の概要を含めた輸血感染事例の現状とその検査の手法を解説する.

参考文献

1) 片山透:輸血後感染症に関する研究,厚生省血液研究事業.平成1~7年度研究報告集
2) 日赤赤十字社:輸血情報0811-116(日本赤十字社HP)
3) Ngui SL, Teo CG : Hepatitis B virus genomic heterogeneity : variation between quasispecies may confound molecular epidemiological analyses of transmission incidents. J Viral Hepat 4:309-315,1997
4) von Weizsacker F, Pult I, Geiss K, et al : Selective transmission of variant genomes from mother to infant in neonatal fulminant hepatitis B. Hepatology 21:8-13,1995
5) 塩沢理英子,松本千惠子,光永滋樹,他:輸血によるB型肝炎ウイルス(HBV)感染例でのウイルスゲノム解析:供血者および患者におけるquasispeciesの解析について.日本輸血学会雑誌 48:473-479,2002
6) 内田茂治:B型肝炎ウイルスの高感度検出と新クローニング法による解析.第22回北海道輸血シンポジウムProceedings,pp53-58,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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