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尿沈渣検査に用いるSternheimer染色陽性細菌について
著者: 星雅人1 井上里奈2 宮崎崇3
所属機関: 1鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療栄養学科 2医療法人社団幸紀会安江病院検査科 3岐阜大学医学部附属病院検査部
ページ範囲:P.854 - P.855
文献購入ページに移動尿沈渣検査に用いられるSternheimer染色液(S染色)は,アルシアンブルーおよびピロニンBが含まれており超生体染色として知られている.したがって,尿沈渣成分を鮮やかに染色することができるうえ,例えば白血球の生死判別により白血球が感染性かコンタミネーションによるものかを判定可能であり,有用かつ多様の情報を提供することができる染色法である1).最近筆者らは,白血球だけでなく細菌においてもS染色でアルシアンブルー陽性の細菌あるいは陰性の細菌がいることを見いだした2).
尿沈渣検査における白血球および細菌の検出は尿路感染症のスクリーニング検査として有用であり,近年フローサイトメトリー法を応用した自動分析装置が開発され威力を発揮している.尿路感染症は最も頻度の高い感染症の一つであり,男性で10~20%,女性で40~50%の人が尿路感染症の既往を有するとされている.また,尿路感染症の診断において,専門医(泌尿器科医など)を受診した場合は,頻尿,排尿痛などの症状の有無により診断・治療が行われており,尿検査は補助診断として用いられているが,小児あるいは高齢者など自覚症状を訴えにくい場合や,専門医以外の受診については尿検査の果たす役割は極めて大きいと考えられる.特に検査室の役割として,尿検査において細菌尿を認めた場合,細菌検査でグラム染色,細菌の培養,同定・感受性検査などが実施されるが,これらの検査には時間を必要とするため,尿沈渣所見あるいはグラム染色など鏡検レベルである程度の菌の種類を迅速に推定できることは臨床的に有用であり,細菌検査室との連携にも極めて重要な意味をもつと考えられる.本稿において,尿沈渣中に認められる細菌にはS染色によるアルシアンブルーで陽性となる細菌が観察されること,またS染色陽性細菌に対する新規染色法と意義について解説する.
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