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文献詳細

雑誌文献

検査と技術41巻12号

2013年11月発行

文献概要

オピニオン

ノロウイルス感染症と血液型

著者: 中込治1

所属機関: 1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染免疫学講座

ページ範囲:P.1150 - P.1150

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 ノロウイルスは,乳幼児から成人に至るウイルス性胃腸炎の原因であり,わが国では年間数百万人の感染者が発生していると推定される.ノロウイルスの病原診断は以前は一部の研究機関に限られていたが,免疫クロマト法による検出が臨床検査の第一線で使われる時代になり,検査技師にとって身近な存在となっている.

 腸管をはじめ,粘膜表面上にはさまざまな糖鎖が発現している.ノロウイルスはこのような糖鎖からなる組織血液型抗原(histo-blood group antigen,HBGA)に吸着することによって感染の第一歩を踏み出している.ノロウイルスのプロトタイプであるノーウォークウイルスは,腸管粘膜上に発現しているHBGAに結合する.一方,非分泌型といわれ,HBGAを唾液や精液などの体液中に分泌せず,また,粘膜上皮にも発現していない人には,ノーウォークウイルスを飲んでもらっても感染しない.ところが,腸管粘膜上に発現しているHBGAをどのようにレセプターとして使うかは,ウイルス株によって異なっている.ノロウイルスはHBGAのうち,ABO(H)型をレセプターとして使うものばかりではなく,唾液中にABH型物質が認められない非分泌型のLewis型抗原をレセプターとするものもある.ノロウイルスとHBGAとの関係は一筋縄ではいかないのだ.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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