文献詳細
臨床医からの質問に答える
腸管出血性大腸菌が検出された場合の法的取り扱いを教えてください
著者: 熊坂一成1
所属機関: 1上尾中央総合病院臨床検査科/感染制御室
ページ範囲:P.1244 - P.1248
文献概要
1982年,米国のオレゴンとミシガンのファストフード店のサンドイッチによる出血性大腸炎集団発生例で,大腸菌O-157が原因菌として分離された1).日本では,1990年に埼玉県の幼稚園で井戸水を原因としたO-157の集団発生事件で園児2人が死亡した.1996年には大阪府堺市で患者5,591人に上るO-157の集団発生事件が起きた.その後は,腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli,EHEC/Shiga toxin-producing Escherichia coli,STEC)感染症の患者数はほぼ横ばいであり,年間千数百人の患者が発生している.
現在は,流通事情を反映して,同一汚染食品が広範囲に流通した結果,一見,散発事例と思われる同時多発的な集団事例(diffuse outbreak)が発生している.2011年には焼き肉チェーン店でユッケと焼き肉が原因とされるEHEC O-111による集団食中毒が富山県,福井県,横浜市において発生し,34名が溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome,HUS)を発症し,5名が脳症で死亡した.
EHEC感染症は正確な診断と迅速なマネジメントが必要な疾患である.個々の患者の診療に加えて,公衆衛生上も適切な対応を要することが多い.本稿では,医師がEHEC感染症と医師診断したときに必要な,保健所長への具体的な届け出の手順を中心に述べる.
参考文献
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