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文献詳細

雑誌文献

検査と技術41巻4号

2013年04月発行

文献概要

トピックス

iPS細胞―輸血医療への応用の可能性

著者: 中村幸夫1

所属機関: 1独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室

ページ範囲:P.311 - P.314

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はじめに

 マウスiPS細胞(induced pluripotent stem cells)の樹立方法が発表されたのは2006年のことであり,それからわずか6年後に,開発者である京都大学の山中伸弥教授にノーベル医学生理学賞が授与された.iPS細胞樹立技術の開発は,そのくらい大きなインパクトを有する細胞工学史上の大金字塔である.特に,ヒトiPS細胞もマウスiPS細胞と全く同様な手法で樹立が可能であることが見いだされたことは(2007年),再生医療への応用のみでなく,疾患者由来のiPS細胞の樹立を可能とし,疾患研究分野や創薬研究分野においても革新的な技術開発となった.

 iPS細胞の再生医療への応用を考えた場合,胚性幹細胞(embryonic stem cells,ES細胞)と比較してさまざまなメリットがあるが,最大のメリットは,拒絶反応を完全に回避できる細胞を入手することが可能になったことと考えられる.血液科領域で標準的な医療となっている幹細胞移植(骨髄移植・臍帯血移植など)に関しては,これを白血病や悪性リンパ腫といった悪性腫瘍疾患へ適用する場合には,GVL効果(graft versus leukemic cell reaction)も期待され,必ずしも患者本人由来の細胞移植が最適ではない.しかし,赤血球輸血や血小板輸血において,特に慢性的にそうした輸血を必要とする疾患に関しては,患者本人由来の細胞移植(赤血球輸血や血小板輸血)が可能となれば,それが最適であることは確かである.

参考文献

1)Miharada K, Hiroyama T, Sudo K, et al : Efficient enucleation of erythroblasts differentiated in vitro from hematopoietic stem and progenitor cells. Nat Biotechnol 24:1255-1256,2006
2)Lu SJ, Feng Q, Park JS, et al : Biologic properties and enucleation of red blood cells from human embryonic stem cells. Blood 112:4475-4484,2008
3)Lapillonne H, Kobari L, Mazurier C, et al : Red blood cell generation from human induced pluripotent stem cells : perspectives for transfusion medicine. Haematologica 95:1651-1659,2010
4)Hiroyama T, Miharada K, Sudo K, et al : Establishment of mouse embryonic stem cell-derived erythroid progenitor cell lines able to produce functional red blood cells. PLoS ONE 3 : e1544 (open access journal), 2008
5)Hiroyama T, Miharada K, Kurita R, et al : Plasticity of cells and ex vivo production of red blood cells. Stem Cell Int 2011 : Article ID 195780 (open access journal), 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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