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文献概要
疾患と検査値の推移
静脈血栓塞栓症(VTE)
著者: 北島勲1
所属機関: 1富山大学医学部臨床分子病態検査学講座
ページ範囲:P.752 - P.758
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静脈内(四肢の深部静脈や大静脈に加えて右心室内まで含む)に種々の原因によって生じた血栓(venous thrombosis,VT)が,血流に乗り肺動脈を閉塞することで呼吸循環器障害が生じる.この病態が肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism,PE)である.最近では,VTとPEとは連続した一連の病態であるという考え方が一般化し,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism,VTE)という疾患概念が定着している1).
古くから欧米では,VTEは虚血性心疾患,脳梗塞と並んで三大循環器疾患として知られていた.しかし,わが国では従来,まれな疾患と認識されてきた.発症頻度は,米国では1980年代半ばまでは増加していたが,予防を含め病院内対策が講じられた結果,現在は低下してきている.一方,日本では1958年から2006年の間にPEは約2.5倍に増加している2).
静脈内(四肢の深部静脈や大静脈に加えて右心室内まで含む)に種々の原因によって生じた血栓(venous thrombosis,VT)が,血流に乗り肺動脈を閉塞することで呼吸循環器障害が生じる.この病態が肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism,PE)である.最近では,VTとPEとは連続した一連の病態であるという考え方が一般化し,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism,VTE)という疾患概念が定着している1).
古くから欧米では,VTEは虚血性心疾患,脳梗塞と並んで三大循環器疾患として知られていた.しかし,わが国では従来,まれな疾患と認識されてきた.発症頻度は,米国では1980年代半ばまでは増加していたが,予防を含め病院内対策が講じられた結果,現在は低下してきている.一方,日本では1958年から2006年の間にPEは約2.5倍に増加している2).
参考文献
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