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文献詳細

雑誌文献

検査と技術41巻9号

2013年09月発行

文献概要

トピックス

磁性粒子を用いたインフルエンザ迅速検査

著者: 安田篤志1 高橋美香1 尾栢隆1 廣川亨1

所属機関: 1北見赤十字病院検査部微生物・遺伝子検査課

ページ範囲:P.798 - P.801

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はじめに

 インフルエンザウイルス感染症は毎年冬季に流行を繰り返し,わが国の人口の5~10%が罹患する疾患である.その臨床症状は短い潜伏期間(1~3日)ののち,突然の高熱,頭痛,関節痛,筋肉痛,倦怠感などの全身症状から始まり,次いで鼻汁や咽頭痛,咳などの症状がみられ,さらに気管支炎や肺炎などを併発することもある.特に小児の場合には中耳炎,熱性痙攣やまれに脳症を発症することもある.また,高齢者,乳幼児,妊婦やさまざまな基礎疾患を有する患者が罹患すると重症化しやすく,入院や死亡の重大な原因となっている1)

 2009年春にメキシコで発生したブタ由来新型インフルエンザウイルス:A(H1N1)pdm2009ウイルスは新型インフルエンザとして世界的に流行し,わが国の新型インフルエンザ患者数は約2,100万人と,ほぼ人口の15%が発病したと推定され,従来のインフルエンザ患者数と比較すると,新型は従来型の約2倍の流行となった2).また,ヒトから発見された高病原性トリインフルエンザH5N1は,症例数は少ないものの死亡率は約60%にのぼり,将来的な流行が危惧されている.このようなインフルエンザウイルスのパンデミックが懸念されるなか,わが国においてインフルエンザウイルス迅速診断キットはその迅速性が高く評価され「迅速診断キットで検査を実施し,抗インフルエンザ薬を投与する」という診療の流れがスタンダードとなっている3).しかし,インフルエンザウイルス迅速診断キットには発症初期の感度が総じて低いという問題点があり4),また,待ち時間におけるインフルエンザウイルスの伝播機会を鑑みた場合には,さらなる測定時間の短縮が必要であるとの指摘がなされている.

 2012年,和光純薬工業社から磁性粒子を用いたインフルエンザウイルスキット「イムノトラップ インフルエンザA・B」(以下,本キット)が発売された.本キットは,測定時間がわずか1分であることを特長としており,日常診療において有用な効果が期待される.当院において本キットと従来法を比較検討した結果を表1に示す.

参考文献

1)菅谷憲夫:新型・季節性インフルエンザ総論.菅谷憲夫(編):新型・季節性インフルエンザ診療ガイド2010-11.日本医事新報社,pp2-14,2010
2)厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部:新型インフルエンザの発生動向~医療従事者向け疫学情報~Ver.3,(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/100423-01.pdf)
3)坂巻弘之,池田俊也,池上直己:インフルエンザ発症抑制におけるOseltamivirの薬剤経済学的分析.薬誌 124:207-216,2004
4)三田村敬子,山崎雅彦,川上千春:インフルエンザの迅速診断.化療の領域 21:1751-1758,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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