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増刊号 超音波×病理 対比アトラス 2章 乳腺
5 浸潤性微小乳頭癌―50歳代女性
著者: 森谷卓也1 中島一毅2
所属機関: 1川崎医科大学病理学2 2川崎医科大学総合外科学
ページ範囲:P.940 - P.942
文献購入ページに移動50歳代,女性.検診マンモグラフィで左乳房A領域にスピキュラを伴う明瞭な腫瘤像を認めた.乳房超音波検査では,左乳房11方向にカテゴリー5の腫瘤像であった.腫瘤像周辺には構築の乱れを有し,ハローは明瞭ではないが,前方境界線の断裂がみられた→図1.内部エコーは充実性で脂肪よりも低く,一部点状高エコーを複数認めた.後方エコーは減弱しており,腫瘍後方組織がつり上がったようなアーチファクトが認められることから,腫瘍内部の音速がかなり早いことが推測された→図2.エラストグラフィでは硬く描出され,内部の線維成分の多さが示唆された.乳管内進展が疑われる所見もあることから,乳頭腺管癌成分を含む広義の硬癌が最も疑われた.MRIではスピキュラを伴う腫瘤で,早期に急速造影され,後期に内部不均一にwash outされた→図3.いずれの画像検査でも癌が疑われ,穿刺吸引細胞診で癌細胞が確認されたため→図4,乳房部分切除術および腋窩リンパ節郭清が施行された.肉眼的には,腫瘍は萎縮乳腺の脂肪組織内に存在する透明感を有する充実性腫瘍で,腫瘍辺縁の境界は不明瞭で,特に胸壁側では白色索状の構造を伴っていた.また,腫瘍中心に白色調の目立つ部が存在していた→図5.この構造は病理組織像にも反映されており,ルーペ像では中心部に硝子様線維化巣が認められた→図6.最終病理診断は浸潤性微小乳頭癌で,核異型は中等度→図7,リンパ管侵襲を中等度認め,腋窩リンパ節にも転移巣がみられた.
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