icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術42巻10号

2014年09月発行

文献概要

増刊号 超音波×病理 対比アトラス 3章 甲状腺・副甲状腺

8 サイログロブリン遺伝子異常症―30歳代女性

著者: 廣川満良1 樋口観世子2 太田寿2

所属機関: 1隈病院病理診断科 2隈病院臨床検査科

ページ範囲:P.996 - P.998

文献購入ページに移動
症例の概要

 30歳代,女性.生下時から甲状腺腫大が認められた.約10年前に甲状腺腫大が目立つようになり,当院を受診した.dyshormonogenetic goiter(後述)が疑われ,経過観察されていた.甲状腺機能検査では,遊離サイロキシン(FT4):0.53(0.7~1.6)ng/dL,遊離トリヨードサイロニン(FT3):2.71(1.7~3.7)pg/mL,甲状腺刺激ホルモン(TSH):4.059(0.3~5.0)μIU/mL,サイログロブリン:4.8ng/mL(0~35)ng/mL,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb):≦0.3(0~27.9)IU/mLであった.放射性ヨード摂取率は2時間値で50.8%,パークロレート放出試験は放出率1.7%と陰性であった.超音波検査では,甲状腺は著明に腫大し,推定重量は185gであった.甲状腺内には多発性の結節性病変がみられた.それらの結節は形状整で,等からやや低エコーを示し,均質な内部構造を示す充実部が多く,一部は囊胞化と思われる無エコー部が混在するものもみられた.甲状腺実質はやや不均質で,ドプラ法では,血流シグナルが著明に増加していた.結節部および非結節部の穿刺吸引細胞診が行われ,いずれも良性と判断された.多結節性病変を含む著明な甲状腺腫大の原因として,遺伝子検査にてホモのミスセンス変異(Cys 1264 Arg)を認めたため,甲状腺全摘術が行われた.

参考文献

1)Hishinuma A, Fukata S, Nishiyama S, et al : Haplotype analysis reveals founder effects of thyroglobulin gene mutations C1058R and C1977S in Japan. J Clin Endocrinol Metab 91:3100-3104,2006
2)Hishinuma A, Fukata S, Kakudo K, et al : High incidence of thyroid cancer in long-standing goiters with thyroglobulin mutations. Thyroid 15:1079-1084,2005
3)宮内昭(監修),網野信行(編集):甲状腺疾患の疾病管理テキスト,第2版.メディカルレビュー社,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら