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文献詳細

雑誌文献

検査と技術42巻5号

2014年05月発行

文献概要

病気のはなし

ムーコル症

著者: 栃木直文1 大久保陽一郎1 澁谷和俊1

所属機関: 1東邦大学医学部病院病理学講座

ページ範囲:P.434 - P.438

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Point

●ムーコル症(mucormycosis)は,好中球減少状態のヒトに発症する日和見感染症の1つである.ムーコル症には特異的な臨床所見が存在しないため,好中球数減少患者では常に鑑別診断に挙げ,必要に応じて頻回の胸部CT検査を行うことが望ましい.

●ムーコルの細胞壁構造は,カンジダやアスペルギルスと大きく異なり,感染が成立しても,血中β-D-グルカン値の上昇はほとんどみられない.

●わが国で使用可能な薬剤のうち,ムーコル症に対して有効なのはアムホテリシンBのみである.全身状態が良好で病変が限局しているのであれば,外科切除も考慮される.

●治療薬選択の観点から,ムーコル症とアスペルギルス症の鑑別は極めて重要である.Grocott染色を用い,菌糸や血管壁など既存構築との関係を注意深く観察することによって,両者の鑑別が可能となることを知っておく必要がある.

参考文献

1)日本医真菌学会用語委員会(編):医真菌学用語集.(http://www.jsmm.org/glossary1.pdf)
2)亀井克彦:ムーコル症.矢﨑義雄(総編集):内科学,第10版.朝倉書店,pp343-344,2013
3)Kume H, Yamazaki T, Togano T, et al : Epidemiology of visceral mycoses in autopsy cases in Japan : comparison of the data from 1989, 1993, 1997, 2001, 2005 and 2007 in Annual of Pathological Autopsy Cases in Japan. Med Mycol J 52:117-127,2011
4)Shimodaira K, Okubo Y, Nakayama H, et al : Trends in the prevalence of invasive fungal infections from an analysis of annual records of autopsy cases of Toho University. Mycoses 55:435-443,2012
5)Abe F, Inaba H, Katoh T, et al : Effects of iron and desferrioxamine on Rhizopus infection. Mycopathologia 110:87-91,1990
6)Okubo Y, Ishiwatari T, Izumi H, et al : Pathophysiological implication of reversed CT halo sign in invasive pulmonary mucormycosis : a rare case report. Diagn Pathol 8:82,2013
7)井手忠,篠崎稔,高橋りえ,他:診断の手助けとなる染色法.澁谷和俊,久米光(監修):深在性真菌症―病理診断アップデートレビュー.協和企画,pp73-85,2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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