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病気のはなし
ムーコル症
著者: 栃木直文1 大久保陽一郎1 澁谷和俊1
所属機関: 1東邦大学医学部病院病理学講座
ページ範囲:P.434 - P.438
文献購入ページに移動●ムーコル症(mucormycosis)は,好中球減少状態のヒトに発症する日和見感染症の1つである.ムーコル症には特異的な臨床所見が存在しないため,好中球数減少患者では常に鑑別診断に挙げ,必要に応じて頻回の胸部CT検査を行うことが望ましい.
●ムーコルの細胞壁構造は,カンジダやアスペルギルスと大きく異なり,感染が成立しても,血中β-D-グルカン値の上昇はほとんどみられない.
●わが国で使用可能な薬剤のうち,ムーコル症に対して有効なのはアムホテリシンBのみである.全身状態が良好で病変が限局しているのであれば,外科切除も考慮される.
●治療薬選択の観点から,ムーコル症とアスペルギルス症の鑑別は極めて重要である.Grocott染色を用い,菌糸や血管壁など既存構築との関係を注意深く観察することによって,両者の鑑別が可能となることを知っておく必要がある.
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