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文献詳細

雑誌文献

検査と技術42巻5号

2014年05月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈微生物〉

抗IL-6抗体“アクテムラ®”投与中の感染症における注意点

著者: 中橋澄江1 亀田秀人1

所属機関: 1東邦大学医療センター大橋病院膠原病リウマチ科

ページ範囲:P.496 - P.499

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はじめに

 アクテムラ®〔トシリズマブ(tocilizumab,TCZ):中外製薬社〕は,インターロイキン6(interleukin-6,IL-6)と呼ばれる炎症性サイトカインの働きのみを抑制する,わが国で誕生した生物学的製剤である.

 関節リウマチ(rheumatoid arthritis,RA)患者ではIL-6が多量に産生されている.大量のIL-6によって滑膜炎や骨破壊が起こり,肝臓で急性炎症蛋白〔C反応性蛋白質(C-reactive protein,CRP),血清アミロイドA蛋白など〕が誘導され,血中濃度が増加する.IL-6は膜型,あるいは可溶型のIL-6レセプターに結合し,それらが細胞膜でgp130と会合することで作用を発現する.アクテムラ®はIL-6レセプターに結合することで,IL-6とIL-6レセプターの結合を阻害し,IL-6作用の中和効果を発揮する.そのため,十分量のアクテムラ(R)の投与中はCRPなどの炎症マーカーが上昇せず,発熱や倦怠感なども著明に抑制するため,感染症の発現や悪化を見過ごす懸念が示されている.

 本稿では,アクテムラ(R)を投与中の患者に発症する感染症の特徴と注意点について述べる.

参考文献

1)小池竜司:トシリズマブの安全性(国内PMSおよび海外安全性データ).Front Rheumatol Clin Immunol 6:144-149,2012
2)亀田秀人:生物学的製剤投与患者にみられる感染症.感染症内科 1:182-186,2013
3)日本リウマチ学会:関節リウマチ(RA)に対するトシリズマブ使用ガイドライン(2013年改訂版).(http://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_tcz_130524.pdf)
4)Mori S, Tokuda H, Sakai F, et al:Radiological features and therapeutic responses of pulmonary nontuberculous mycobacterial disease in rheumatoid arthritis patients receiving biological agents:a retrospective multicenter study in Japan. Mod Rheumatol 22:727-737,2012
5)徳田均:非AIDS症例におけるニューモシスチス肺炎.日胸臨 69:112-123,2010
6)五野貴久:ニューモシスチス肺炎―非HIV症例を中心に.医のあゆみ 237:171-175,2011
7)日本リウマチ学会:B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言.(URL:http://www.ryumachi-jp.com/info/news110906_new.pdf)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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