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病気のはなし
リンチ症候群―(遺伝性非ポリポーシス大腸癌:HNPCC)
著者: 熊谷二朗1
所属機関: 1横浜市立みなと赤十字病院病理診断科
ページ範囲:P.648 - P.653
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●リンチ(Lynch)症候群は,DNAミスマッチ修復遺伝子の胚細胞性変異あるいは不活性化によって,全身のさまざまな臓器の腫瘍,特に大腸癌,胃癌,子宮体癌,卵巣癌などを発生する家族性腫瘍症候群である.なかでも大腸癌は最も頻度が高く,このため,以前は疾患名として“遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)”とも呼ばれてきた.
●リンチ症候群患者は生涯において高率に大腸癌を発生し,また初回発生診断時の年齢も一般の散発性大腸癌に比べて10歳以上若い.
●リンチ症候群の遺伝形式は常染色体性優性遺伝であり,その原因となるDNAミスマッチ修復遺伝子としては,現在までにhMLH1,hMSH2,hPMS2,hMSH6の4つが知られている.
●患者からの遺伝子を用いたマイクロサテライト不安定性(MSI)検査はリンチ症候群の診断において重要であり,特に,その確定のためには必須である.
●リンチ症候群の大腸癌に対する治療法は散発性大腸癌に準じるが,患者は治療後も大腸を含む多臓器の腫瘍の多発が予想されるので,その早期発見のためのサーベイランスと,このような遺伝的素因を保有することに対する遺伝カウンセリングなどを行うことが必要である.
●リンチ(Lynch)症候群は,DNAミスマッチ修復遺伝子の胚細胞性変異あるいは不活性化によって,全身のさまざまな臓器の腫瘍,特に大腸癌,胃癌,子宮体癌,卵巣癌などを発生する家族性腫瘍症候群である.なかでも大腸癌は最も頻度が高く,このため,以前は疾患名として“遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)”とも呼ばれてきた.
●リンチ症候群患者は生涯において高率に大腸癌を発生し,また初回発生診断時の年齢も一般の散発性大腸癌に比べて10歳以上若い.
●リンチ症候群の遺伝形式は常染色体性優性遺伝であり,その原因となるDNAミスマッチ修復遺伝子としては,現在までにhMLH1,hMSH2,hPMS2,hMSH6の4つが知られている.
●患者からの遺伝子を用いたマイクロサテライト不安定性(MSI)検査はリンチ症候群の診断において重要であり,特に,その確定のためには必須である.
●リンチ症候群の大腸癌に対する治療法は散発性大腸癌に準じるが,患者は治療後も大腸を含む多臓器の腫瘍の多発が予想されるので,その早期発見のためのサーベイランスと,このような遺伝的素因を保有することに対する遺伝カウンセリングなどを行うことが必要である.
参考文献
1)新井正美:リンチ症候群(Lynch syndrome).日癌治療会誌 47:473-481,2012
2)古川洋一:HNPCC日本の現状.大腸癌Frontier 3:120-124,2010
3)大腸癌研究会(編):遺伝性大腸癌 診療ガイドライン 2012年版.金原出版,2012
4)諸橋一,諸橋聡子,袴田健一,他:遺伝性非ポリポーシス(HNPCC),Lynchの病理組織学的特徴.通常の大腸癌,腺腫と何が違う? 大腸癌Frontier 4:59-62,2011
5)Umar A, Boland CR, Terdiman JB, et al : Revised Bethesda Guidelines for hereditary nonpolyposis colorectal cancer (Lynch syndrome) and microsatellite instability. J Natl Cancer Inst 96:261-268,2004
6)上野雅資,藤本佳也,黒柳洋弥,他:HNPCCの治療.臨消内科 23:1281-1286,2008
7)松本美野里,中島健,坂本琢,他:新規Lynch症候群患者の拾い上げと診断後のサーベイランスの実践.胃と腸 47:2000-2005,2012
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