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文献詳細

雑誌文献

検査と技術42巻7号

2014年07月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈生化学〉

生化学自動分析装置における供給水の水質劣化が及ぼす分析への影響

著者: 末吉茂雄1

所属機関: 1千葉県がんセンター臨床検査部

ページ範囲:P.706 - P.710

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はじめに

 生化学検査における分析精度には,分析装置の性能の向上や診断薬の改良など目を見張るものがある.一方で,従来の分析精度では見えていなかった誤差も,その要因の解明が可能となってきた.このような状況下において,分析装置,診断薬以外にも分析に起因する1つとして,分析装置に供給される純水の水質の影響が見えてきた.各分析装置で若干の構造の違いはあるにしろ,純水は,試料・試薬分注,攪拌,洗浄機構および恒温槽など,さまざまな部分に供給されている.

 一般的な分析装置に用いられる純水の精製は,逆浸透膜(reverse osmosis:RO)-イオン交換方式の純水装置が多く導入されている.ROによって不純物を除去したRO水を,さらに,イオン交換樹脂で脱イオンして純水としている.この方式は,イオン交換樹脂の飽和が近づくにつれて導電率が上昇してしまい,水質劣化が生じるため,イオン交換樹脂の定期的なメンテナンスが欠かせない.メンテナンスを怠り,分析装置メーカーが規定する導電率を上回る水質規準で稼動した場合,分析結果への影響が取りざたされている.

 本稿では,筆者が飽和状態に近づけたイオン交換樹脂を用いることにより純水の水質を劣化させ,検査データに及ぼす影響について検討したことを中心に述べる.このことは,災害時のように高純度な純水が確保できない場合の分析にもかかわってくる.災害後の電力,ガス,水道といったライフライン復旧,特に水道の復旧には長い時間を要するため,水不足によって検査室の機能が大きく損なわれる事態を招くこともある1).やむを得ず分析装置へ劣化した水質の水を供給することを迫られた場合も,水質が分析装置に及ぼす影響をあらかじめ把握しておくことで,ある程度のリスク管理が可能となる.

参考文献

1)ライフラインの地震時相互連関を考慮した都市機能防護戦略に関する研究小委員会:東日本大震災におけるライフライン復旧概況(時系列編).土木学会地震工学委員会,pp16-17,2011
2)妹尾学,阿部光雄,鈴木喬(編):イオン交換 高度分離技術の基礎,第1版.講談社,pp10-11,pp41-43,1991
3)末吉茂雄,小川貴史,曽川一幸,他:生化学自動分析装置に用いる純水の水質劣化が検査に与える影響.日臨検自動化会誌 39:14-21,2014
4)CLSI Document C3-A4 : Preparation and Testing of Reagent Water in the Clinical Laboratory : Approved Guideline 4th ed. Clinical Laboratory Standards, 2006
5)神山清志,雨宮一彦,長谷川隆,他:自動分析装置における細菌汚染の原因と対策 自施設の検証および埼玉日立ユーザー会における水質調査結果より.日臨検自動化会誌 27:684-689,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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