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マイクロRNAを用いた関節リウマチ検査
著者: 吉富啓之12 村田浩一2 布留守敏2 伊藤宣2 松田秀一2
所属機関: 1京都大学大学院医学研究科次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点 2京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座整形外科学
ページ範囲:P.732 - P.735
文献購入ページに移動関節リウマチは滑膜肥厚を伴う関節腫脹から始まり,進行すると軟骨や骨のびらんから多関節の破壊をきたし,日常生活能力の著しい低下へと至る病気である.抗TNF(tumor necrosis factor)療法をはじめとする生物学的製剤の登場によって治療成績は著しく向上したが,関節破壊防止には早期診断・早期治療が重要であるということも明らかになってきた.
関節リウマチの早期診断・早期治療を行うために,関節リウマチの診断基準が23年ぶりに改訂された.関節リウマチ新分類基準〔ACR/EULAR(American College of Rheumatology/European League against Rheumatism)2010〕では自己抗体であるリウマチ因子(rheumatoid factor:RF)と抗CCP(cyclic citrullinated peptides)抗体〔ACPA(anti-citrullinated protein antibodies)〕に重点が置かれており,RFまたはACPAが強陽性の場合には小関節1つの腫脹で関節リウマチと判断される.一方で,これらのマーカーが陰性の場合に診断基準を満たすには11カ所以上の関節が罹患する必要があり,発症早期での診断が難しくなる.また新分類基準では,旧診断基準に比べて特異度がやや低下することから,鑑別診断を確実に行う必要がある.このような意味で,自己抗体とは機序の異なった新機軸のバイオマーカーが求められている.
マイクロRNA(ribonucleic acid)は22塩基程度の,蛋白質をコードしない小さなRNAで,標的とする遺伝子のメッセンジャーRNAに結合し,遺伝子発現を抑制する役割をもつ(図1).ヒトでは現在2,200種類程度が登録されており(miR Base 19),全遺伝子の50%以上がマイクロRNAに制御されていると考えられている.マイクロRNAは細胞分化,アポトーシス,脂質代謝,骨代謝,軟骨代謝,免疫系,腫瘍などのさまざまな生命現象にかかわっている1).また興味深いことに,血漿や血清中にもマイクロRNAが安定して存在し,腫瘍のバイオマーカーとして有用であることが報告された2).そこで筆者らは,関節リウマチでの働きが報告されている5種類のマイクロRNAであるmiR-16,miR-132,miR-146a,miR-155,miR-2233)の血漿での発現を解析した.その結果,これらの血漿中マイクロRNAは関節リウマチの病勢の1つである腫脹関節数と有意に相関し,血漿中miR-132は関節リウマチ患者や変形性関節症患者に比べて健常人で高値であった4).miR-132は関節リウマチと変形性関節症を区別することはできなかったが,血漿中マイクロRNAをさらに網羅的に解析することによって,感度特異度の高い新たな関節リウマチのバイオマーカーが得られると考えられた.
本稿では網羅的解析によって得られた,関節リウマチのバイオマーカーとしての血漿中マイクロRNAについて紹介する.
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