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臨床医からの質問に答える
輸血遡及調査の必要性について教えてください
著者: 紀野修一1
所属機関: 1日本赤十字社北海道ブロック血液センター
ページ範囲:P.876 - P.880
文献購入ページに移動遡及調査の背景
1951年,わが国で最初の民間血液銀行が開設された.当時は売血制度が認可されており,血液銀行が供給していた血液のほとんどは売血者由来のもので,その血液を輸血することで発症する輸血後肝炎が社会問題となっていた.1964年,駐日米国大使のライシャワー氏が暴漢に襲われ,手術時の輸血が原因で輸血後肝炎を発症したことを受け,時の池田内閣は売血制度の廃止と献血制度への移行を閣議決定した.売血時代の輸血後肝炎の発生率は約50%であったが,献血制度への移行によって,その発生率は約3分の1に減少した.1972年から輸血用血液のHBs(hepatitis B surface)抗原検査が行われるようになり,検査対象となる病原体の種類は徐々に増えていった.
現在は,全献血者の血液を対象に,梅毒,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV),C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV),ヒト後天性免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV),ヒトT細胞白血病ウイルス,ヒトパルボウイルスについて血清学的スクリーニング検査が行われ,これらに加えて,HBV,HCV,HIVについては20人分の献血者検体をプールした核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)が行われている(2014年8月1日から個々の献血者血液を対象にしたNATが開始される予定).これらの検査によって,輸血による感染症発生率は大幅に低下した(表1)1).
1951年,わが国で最初の民間血液銀行が開設された.当時は売血制度が認可されており,血液銀行が供給していた血液のほとんどは売血者由来のもので,その血液を輸血することで発症する輸血後肝炎が社会問題となっていた.1964年,駐日米国大使のライシャワー氏が暴漢に襲われ,手術時の輸血が原因で輸血後肝炎を発症したことを受け,時の池田内閣は売血制度の廃止と献血制度への移行を閣議決定した.売血時代の輸血後肝炎の発生率は約50%であったが,献血制度への移行によって,その発生率は約3分の1に減少した.1972年から輸血用血液のHBs(hepatitis B surface)抗原検査が行われるようになり,検査対象となる病原体の種類は徐々に増えていった.
現在は,全献血者の血液を対象に,梅毒,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV),C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV),ヒト後天性免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV),ヒトT細胞白血病ウイルス,ヒトパルボウイルスについて血清学的スクリーニング検査が行われ,これらに加えて,HBV,HCV,HIVについては20人分の献血者検体をプールした核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)が行われている(2014年8月1日から個々の献血者血液を対象にしたNATが開始される予定).これらの検査によって,輸血による感染症発生率は大幅に低下した(表1)1).
参考文献
1)日本赤十字社:輸血情報(0107-65,0107-66,0206-73,0310-77,0409-84,0509-90,0610-102,0707-108,0807-113,0908-120,1010-125,1108-129,1209-133,1310-136),2011~2013
2)厚生労働省医薬食品局血液対策課:血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン(改定版).平成17年3月(平成24年3月一部改正),2012(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/dl/120319-01.pdf)
3)厚生労働省医薬食品局血液対策課:平成25年版血液事業報告,2014(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/jigyouhoukoku_h25/index.html)(2014年6月12日現在)
4)厚生労働省医薬食品局血液対策課:輸血療法の実施に関する指針(改定版).平成17年9月(平成24年3月一部改正),2012(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/dl/tekisei-01.pdf)(2014年6月12日現在)
5)紀野修一:受血者を輸血感染症から守る医療機関の体制─輸血前検体保存と輸血前後感染症検査.医のあゆみ 235:24-31,2010
6)安藤高宣,丹羽玲子,片井明子,他:東海地区の医療機関における輸血感染症対策の現状─輸血感染症対策に関するアンケート調査報告.日輸血細胞治療会誌 53:607-612,2007
7)紀野修一,友田豊,伊藤喜久,他:旭川医科大学病院における輸血前・輸血後感染症検査の実施状況.日輸血細胞治療会誌 55:21-28,2009
8)猪股真喜子,山口千鶴,山本磨知子,他:輸血前・後ウイルス感染症検査の実施率向上について.日輸血細胞治療会誌 56:702-706,2010
9)早川郁代,徳野治,橋本誠,他:輸血後感染症検査通知システム導入による輸血後感染症検査実施率の変化について.日輸血細胞治療会誌 58:547-551,2012
10)紀野修一:輸血感染症とその監視.機器・試薬 37:357-363,2014
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