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Laboratory Practice 〈微生物〉
β-D-グルカン測定法の原理と注意点
著者: 吉田耕一郎1
所属機関: 1近畿大学医学部附属病院安全管理部 感染対策室
ページ範囲:P.80 - P.84
文献購入ページに移動はじめに
(1→3)-β-D-グルカン(以下,β-D-グルカン)は,ムーコルを除く全ての真菌に共通の重要な細胞壁構成成分の1つである.この点に着目して,わが国で深在性真菌症のスクリーニング法として開発されたのがβ-D-グルカン測定法である.
国内の深在性真菌症診療の現場では補助診断法の1つとして従来から広く使用され,一定の評価を受けてきた.一方で,β-D-グルカン測定における偽陽性の問題は以前から指摘されており,その有用性は限定的との指摘もある.しかし,近年では,2008年に改訂されたEORTC/MSG(European Organization for Research and Treatment of Cancer/Mycoses Study Group)の深在性真菌症診断ガイドライン1)や,2012年に公表されたESCMID(European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases)のカンジダ症のガイドライン(診断法)2)でもβ-D-グルカン測定が推奨されており,海外での評価も高まりつつある.
本項では,β-D-グルカン測定法の開発の歴史を紹介し,現在,国内で使用されているキットの測定原理を示す.そのうえで,β-D-グルカン測定の問題点を整理し,測定上,あるいは得られた数値の評価における注意点について概説する.
(1→3)-β-D-グルカン(以下,β-D-グルカン)は,ムーコルを除く全ての真菌に共通の重要な細胞壁構成成分の1つである.この点に着目して,わが国で深在性真菌症のスクリーニング法として開発されたのがβ-D-グルカン測定法である.
国内の深在性真菌症診療の現場では補助診断法の1つとして従来から広く使用され,一定の評価を受けてきた.一方で,β-D-グルカン測定における偽陽性の問題は以前から指摘されており,その有用性は限定的との指摘もある.しかし,近年では,2008年に改訂されたEORTC/MSG(European Organization for Research and Treatment of Cancer/Mycoses Study Group)の深在性真菌症診断ガイドライン1)や,2012年に公表されたESCMID(European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases)のカンジダ症のガイドライン(診断法)2)でもβ-D-グルカン測定が推奨されており,海外での評価も高まりつつある.
本項では,β-D-グルカン測定法の開発の歴史を紹介し,現在,国内で使用されているキットの測定原理を示す.そのうえで,β-D-グルカン測定の問題点を整理し,測定上,あるいは得られた数値の評価における注意点について概説する.
参考文献
1)De Pauw B, Walsh TJ, Donnelly JP, et al : Revised definitions of invasive fungal disease from the European Organization for Research and Treatment of Cancer/Invasive Fungal Infections Cooperative Group and the National Institute of Allergy and Infectious Diseases Mycoses Study Group (EORTC/MSG) Consensus Group. Clin Infect Dis 46:1813-1821,2008
2)Cuenca-Estrella M, Verweij PE, Arendrup MC, et al : ESCMID guideline for the diagnosis and management of Candida diseases 2012 : diagnostic procedures. Clin Microbiol Infect 18(Suppl 7):9-18,2012
3)Obayashi T, Yoshida M, Mori T, et al : Plasma (1→3)-β-D-glucan measurement in diagnosis of invasive deep mycosis and fungal febrile episodes. Lancet 345:17-20,1995
4)吉田耕一郎,二木芳人,見手倉久治,他:測定キット間の血中(1→3)-β-D-グルカン測定値不一致の原因に関する検討.日医真菌会誌 42:237-242,2001
5)吉田耕一郎,二木芳人,松田淳一,他:改良アルカリ前処理法を用いた血中(1→3)-β-D-グルカン測定法の基礎的検討.感染症誌 79:433-442,2005
6)吉田耕一郎,宮下修行,尾長谷靖,他:改良アルカリ前処理法を用いた(1→3)-β-D-グルカン測定法の臨床的有用性─従来法との比較.感染症誌 80:701-705,2006
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8)Yoshida K, Shoji H, Takuma T, et al : Clinical viability of Fungitell, a new (1→3)-β-D : -glucan measurement kit, for diagnosis of invasive fungal infection, and comparison with other kits available in Japan. J Infect Chemother 17:473-477,2011
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