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文献詳細

雑誌文献

検査と技術43巻10号

2015年09月発行

文献概要

増刊号 血液形態アトラス Ⅰ部 造血器悪性腫瘍 2章 骨髄増殖性腫瘍(MPN)

1 慢性骨髄性白血病(CML)

著者: 増田亜希子1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部

ページ範囲:P.914 - P.917

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 慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)は,多能性造血幹細胞レベルの未分化な細胞に,染色体転座t(9;22)(q34;q11.2)が生じることで発症する.変異22番染色体はフィラデルフィア(Philadelphia:Ph)染色体と呼ばれ,Ph染色体上に形成されたBCR-ABL1融合遺伝子が,恒常的な活性型チロシンキナーゼとして作用し,細胞を過剰に増殖させる1〜3)

1.CMLの病期

 無治療のCMLは,3〜5年の慢性期(chronic phase:CP)を経て,移行期(accelerated phase:AP),急性転化期(blast phase:BP)へと移行する.CPでは骨髄球以降の顆粒球系細胞の増加が著明で,白血球や血小板の増加を来す.AP,BPと移行するにつれ,幼若細胞が増加する.末梢血または骨髄の芽球比率≧20%の場合は,BPと診断する.CMLの多くの症例で脾腫を来すが,無症状の場合が多いため,健康診断等で白血球増加を指摘されて受診するケースが多い.

2.CMLの治療とPCRによるモニタリング

 CMLの治療には,BCR-ABL1チロシンキナーゼを選択的に阻害するチロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ,ダサチニブ,ニロチニブなど)が用いられる.チロシンキナーゼ阻害薬が導入されてから,治療成績は大きく向上した.BPは急性白血病と同様の臨床像であり,急性白血病としての治療が行われる.AP/BPに移行すると予後不良であるが,CPでは治療成績良好であるため,早期発見の意義は大きい.

 治療効果判定を行ううえで,リアルタイムPCR(polymerase chain reaction)によるBCR-ABL1 mRNA(messenger ribonucleic acid)のモニタリングは非常に重要である.治療経過中にチロシンキナーゼ阻害薬による治療効果が不良となる場合があるが,その原因のひとつとして,ABL1遺伝子変異が挙げられる.

参考文献

2章 骨髄増殖性腫瘍(MPN) 参考文献リスト
1)Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al (ed) : WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, 4th ed. IARC, Lyon,2008
2)直江知樹,朝長万左男,中村栄男,他(編):WHO血液腫瘍分類─WHO分類2008をうまく活用するために.医薬ジャーナル社,2010
3)日本血液学会:造血器腫瘍診療ガイドライン,2013年版.WEB版(第1.1版)(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/index.html:最終アクセス2015年8月7日)
4)Klampfl T, Gisslinger H, Harutyunyan AS, et al : Somatic mutations of calreticulin in myeloproliferative neoplasms. N Engl J Med 369:2379-2390,2013
5)Nangalia J, Massie CE, Baxter EJ, et al : Somatic CALR mutations in myeloproliferative neoplasms with nonmutated JAK2. N Engl J Med 369:2391-2405,2013
6)Heuck G : Falle von Leukamie mit eigenthumlichem Blutresp. Knochenmarksbefund.Virchow Arch 78:475-496,1879

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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