文献詳細
文献概要
増刊号 血液形態アトラス Ⅰ部 造血器悪性腫瘍 6章 成熟T細胞腫瘍
1 成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL/ATLL)
著者: 水間知世1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部
ページ範囲:P.998 - P.1001
文献購入ページに移動 成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma:ATL/ATLL)は,HTLV-1(human T-cell leukemia virus type-1)の感染により引き起こされるT細胞のリンパ腫である.flower cellと呼ばれる異常リンパ球の増加を主体とした白血球増加,リンパ節腫脹,皮膚病変,ATL細胞の浸潤による臓器障害,LD(lactate dehydrogenase)高値,高カルシウム血症,日和見感染症などが出現する1〜3).日本の九州・沖縄地方,中央アフリカや中南米が好発地域である.最近わが国では,九州・沖縄地方以外の発症が増えている.ATLは,臨床的にくすぶり型,慢性型,リンパ腫型,急性型の4病型に分類される(→表1)4).くすぶり型・慢性型は低悪性度ATL,リンパ腫型・急性型は高悪性度ATLとされる.
HTLV-1はレトロウイルス科に属するRNAウイルスである.HTLV-1キャリアが生涯においてATLを発症する確率は約5%であり,大多数のキャリアは生涯無症候のままである.ATLの発症は通常40歳以降であり,平均68.3歳である.HTLV-1キャリアは,わが国では西南日本沿岸部を中心に約110万人存在する.主な感染経路には,母乳を介した母児感染,男女間感染,輸血の3つがあり,母親がキャリアであった場合は母乳栄養児の20.5%が感染すると報告されている(人工栄養児では2.4%).
治療としては,急性型,リンパ腫型,予後不良因子(LD,アルブミン,BUNのいずれかひとつ以上が異常値)を持つ慢性型では,多剤併用化学療法が施行される.若年者では同種造血幹細胞移植も検討される.最近では,ATL細胞の表面に発現しているケモカイン受容体のCCR4に対するモノクローナル抗体(モガムリズマブ)が臨床応用されている.
HTLV-1はレトロウイルス科に属するRNAウイルスである.HTLV-1キャリアが生涯においてATLを発症する確率は約5%であり,大多数のキャリアは生涯無症候のままである.ATLの発症は通常40歳以降であり,平均68.3歳である.HTLV-1キャリアは,わが国では西南日本沿岸部を中心に約110万人存在する.主な感染経路には,母乳を介した母児感染,男女間感染,輸血の3つがあり,母親がキャリアであった場合は母乳栄養児の20.5%が感染すると報告されている(人工栄養児では2.4%).
治療としては,急性型,リンパ腫型,予後不良因子(LD,アルブミン,BUNのいずれかひとつ以上が異常値)を持つ慢性型では,多剤併用化学療法が施行される.若年者では同種造血幹細胞移植も検討される.最近では,ATL細胞の表面に発現しているケモカイン受容体のCCR4に対するモノクローナル抗体(モガムリズマブ)が臨床応用されている.
参考文献
6章 成熟T細胞腫瘍 参考文献リスト
1)Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al (ed) : WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, 4th ed. IARC, Lyon,2008
2)直江知樹,朝長万左男,中村栄男,他(編):WHO血液腫瘍分類─WHO分類2008をうまく活用するために.医薬ジャーナル社,2010
3)日本血液学会:造血器腫瘍診療ガイドライン,2013年版.WEB版(第1.1版)(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/index.html:最終アクセス2015年8月7日)
4)Shimoyama M : Diagnostic criteria and classification of clinical subtypes of adult T-cell leukaemia-lymphoma. A report from the Lymphoma Study Group (1984-1987). Br J Haematol 79:428-437,1991
5)Lymphoma Study Group of Japanese Pathologists : The world health organization classification of malignant lymphomas in japan : incidence of recently recognized entities. Pathol Int 50:696-702,2000
6)Jaffe ES, Harris NL, Stein H, et al (ed) : World Health Organization Classification of Tumours. Pathology and genetics, Tumor of Haematopoietic and lymphoid Tissues, 3rd ed. IARC, Lyon,2001
7)稲葉亨,西村博志:血管免疫芽球性T細胞リンパ腫.臨検 57:1634-1637,2013
8)Kim DH, Kamel-Reid S, Chang H, et al : Natural killer or natural killer/T cell lineage large granular lymphocytosis associated with dasatinib therapy for Philadelphia chromosome positive leukemia. Haematologica 94:135-139,2009
掲載誌情報