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文献詳細

雑誌文献

検査と技術43巻10号

2015年09月発行

文献概要

増刊号 血液形態アトラス Ⅱ部 造血器腫瘍以外 8章 白血球系

8 血球貪食症候群(HPS)

著者: 大金亜弥1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部

ページ範囲:P.1035 - P.1037

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 血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)は,感染症,自己免疫異常,悪性疾患などが契機となり,骨髄内で貪食細胞が増加した結果,血球減少を来す病態である.一次性と二次性があり,ほとんどが二次性である.HPSの分類を→表1に示す7).一次性では,常染色体性劣性遺伝の家族性血球貪食性リンパ組織球症(familial hemophagocytic lymphohistiocytosis:FHL)など,先天性の免疫異常に伴うものが含まれる.二次性の基礎疾患では,感染症,リンパ腫,自己免疫疾患が多い.感染症関連では,EBV(Epstein-Barr virus)関連〔EBV-AHS(Epstein-Barr virus-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis)〕が大半を占める.HPSの発症機序には,①サイトカインを介する機序,②自己抗体を介する機序,③免疫複合体を介する機序の3つが考えられている.

 EBV-AHSでは,EBVの初回感染や再活性化に伴い発症する.リンパ腫関連血球貪食症候群(lymphoma-associated hemophagocytic syndrome:LAHS)は,B細胞性とT/NK細胞性が半々ずつみられる.B細胞性は高齢者に多く,EBV非関連の場合が多いが,T/NK細胞性は若年層に多く,EBV遺伝子が高率に陽性である.B細胞性の半数はIVL(intravascular lymphoma),T/NK細胞性の半数は鼻および鼻型リンパ腫であり,どちらも肝脾腫と骨髄浸潤を特徴とする.その他に,同種造血幹細胞移植後にHPSを発症する場合がある.

 HPSの治療としては,高サイトカイン病態のコントロールとして,ステロイドや化学療法,同種造血幹細胞移植などが行われている.病型により予後は異なり,特にリンパ腫由来のHPSの予後は極めて不良である.

参考文献

8章 白血球系 参考文献リスト
1)日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会:日本版敗血症診療ガイドライン.日集中医誌 20:124-173,2013(http://www.jsicm.org/pdf/SepsisJapan2013.pdf:最終アクセス2015年8月7日)
2)遠藤重厚,鈴木泰,高橋学:プレセプシン─新しい敗血症のマーカー.検と技 42:196-199,2014
3)大橋春彦,堀田知光:薬剤性造血器障害─臨床 病理と臨 27:728-732,2009
4)風間啓至,吉永健太郎:薬剤性血液異常.診断と治療 99:1230-1235,2011
5)日本小児血液・がん学会:小児がん診療ガイドライン 第6章 神経芽腫(http://www.jspho.jp/pdf/guideline/ccgl11_10.pdf:最終アクセス2015年8月7日)
6)森脇昭介,万代光一,岡部健一,他:骨髄穿刺・生検による骨髄転移の病理学的検討.癌の臨 49:203-209,2003
7)熊倉俊一:HPSの病態・診断・治療.血栓止血誌 19:210-215,2008
8)McKenna RW, Asplund SL, Kroft SH : Immunophenotypic analysis of hematogones (B-lymphocyte precursors) and neoplastic lymphoblasts by 4-color flow cytometry. Leuk Lymphoma 45:277-285,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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