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増刊号 血液形態アトラス Ⅱ部 造血器腫瘍以外 9章 赤血球系
5 遺伝性球状赤血球症(HS)
著者: 野々部亮子1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部
ページ範囲:P.1050 - P.1051
文献購入ページに移動 遺伝性球状赤血球症(hereditary elliptocytosis:HS)は黄疸,貧血,脾腫を主徴とし,末梢血における小型球状赤血球の存在や浸透圧抵抗の減弱を特徴とする先天性溶血性貧血である5).本症は,わが国の先天性溶血性貧血において,その約70%を占める最も頻度の高い疾患である.
原因となる遺伝子としてはSPTA1(spectrinα鎖),SPTB1(spectrinβ鎖),ANK1(ankyrin 1),SLC4A1(protein AE,またはband 3),ELB42(protein 4.2)などが報告されており,細胞骨格の異常により,円板状の赤血球形態を保てなくなる5).通常,遺伝形式は常染色体優性遺伝であるが,常染色体劣性遺伝を示す例や遺伝性を証明できない弧発例と考えられる症例も全体の約1/3程度存在する.
HSの症状に関しては,骨髄の赤芽球系過形成のため,貧血は代償されていることが多い.重症例では中等度の黄疸と貧血症状が認められる.また,高頻度に脾腫がみられ,胆石の合併も多く認める.さらに,他の溶血性貧血を呈する疾患と同様,急激な貧血の増悪をみることがある.溶血発作と無形成発作の2種類が知られており,本症の診断の契機となる場合も多い.
本症のもっとも有効な治療法は摘脾である.軽症のHSでは必ずしも積極的に摘脾を行う必要はないが,注意深い経過観察が必要である.
原因となる遺伝子としてはSPTA1(spectrinα鎖),SPTB1(spectrinβ鎖),ANK1(ankyrin 1),SLC4A1(protein AE,またはband 3),ELB42(protein 4.2)などが報告されており,細胞骨格の異常により,円板状の赤血球形態を保てなくなる5).通常,遺伝形式は常染色体優性遺伝であるが,常染色体劣性遺伝を示す例や遺伝性を証明できない弧発例と考えられる症例も全体の約1/3程度存在する.
HSの症状に関しては,骨髄の赤芽球系過形成のため,貧血は代償されていることが多い.重症例では中等度の黄疸と貧血症状が認められる.また,高頻度に脾腫がみられ,胆石の合併も多く認める.さらに,他の溶血性貧血を呈する疾患と同様,急激な貧血の増悪をみることがある.溶血発作と無形成発作の2種類が知られており,本症の診断の契機となる場合も多い.
本症のもっとも有効な治療法は摘脾である.軽症のHSでは必ずしも積極的に摘脾を行う必要はないが,注意深い経過観察が必要である.
参考文献
9章 赤血球系 参考文献リスト
1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究班:再生不良性貧血診療の参照ガイド,平成26年度改訂版(http://zoketsushogaihan.com/file/guideline_H26/AA.pdf:最終アクセス2015年8月7日)
2)Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al (ed) : WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, 4th ed. IARC, Lyon,2008
3)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業特発性造血障害に関する調査研究班:発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド,平成26年度改訂版(http://zoketsushogaihan.com/file/guideline_H26/PNH2015.pdf)
4)日本鉄バイオサイエンス学会治療指針作成委員会(編):鉄剤の適正使用による貧血治療指針,改訂第2版(http://jbis.sub.jp/pdf/tetu-ketubou.pdf:最終アクセス2015年8月7日)
5)Bolton-Maggs PH, Langer JC, Iolascon A, et al : Haematology Task Force of the British Committee for Standards in Haematology : Guidelines for the diagnosis and management of hereditary spherocytosis-2011update. Br J Haematol 156:37-49,2012
6)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業特発性造血障害に関する調査研究班:自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド,平成25年度改訂版(http://zoketsushogaihan.com/file/guideline_H25/5.pdf:最終アクセス2015年8月7日)
7)Berentsen S, Ulvestad E, Langholm R, et al : Primary chronic cold agglutinin disease : a population based clinical study of 86 patients. Haematologica 91:460-466,2006
8)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究班:赤芽球癆診療の参照ガイド,改訂第3版(http://zoketsushogaihan.com/file/guideline_H25/2.pdf:最終アクセス2015年8月7日)
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