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貯血式自己血輸血とは?
■貯血式自己血輸血の歴史注1)
貯血式自己血輸血とは,あらかじめ患者自身の血液を採取して保管しておき,手術中の出血に対応する方法であり,わが国では1980年代から普及しはじめた.当時,輸血後肝炎(主に現在のC型肝炎)の発症率は同種血輸血患者の10%弱1,2)であり,貯血式自己血輸血は,まさにこの輸血後肝炎の予防目的であった3,4).手術中の出血が輸血を要するほど多いが,患者自ら貯血ができ,完治すればおおむね生命予後の良好な疾患(先天性心臓病,弁膜症,側彎症,変形性関節症など)では,貯血式自己血輸血は輸血後肝炎を回避できる夢の治療であった.しかしその後,輸血感染症検査の進歩で,輸血後肝炎の発症率は急激に減少し5,6),2014年,個別核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)導入後はほぼゼロになる(ゼロにはなりません)と予測されている.貯血式自己血輸血はその目的を失ったかにみえたが,これまでの過程で感染症予防以外にも多くの効用が見いだされ,現在も広く実施されている.
■貯血式自己血輸血の歴史注1)
貯血式自己血輸血とは,あらかじめ患者自身の血液を採取して保管しておき,手術中の出血に対応する方法であり,わが国では1980年代から普及しはじめた.当時,輸血後肝炎(主に現在のC型肝炎)の発症率は同種血輸血患者の10%弱1,2)であり,貯血式自己血輸血は,まさにこの輸血後肝炎の予防目的であった3,4).手術中の出血が輸血を要するほど多いが,患者自ら貯血ができ,完治すればおおむね生命予後の良好な疾患(先天性心臓病,弁膜症,側彎症,変形性関節症など)では,貯血式自己血輸血は輸血後肝炎を回避できる夢の治療であった.しかしその後,輸血感染症検査の進歩で,輸血後肝炎の発症率は急激に減少し5,6),2014年,個別核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)導入後はほぼゼロになる(ゼロにはなりません)と予測されている.貯血式自己血輸血はその目的を失ったかにみえたが,これまでの過程で感染症予防以外にも多くの効用が見いだされ,現在も広く実施されている.
参考文献
1)厚生労働省:血液事業の情報ページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kenketsugo/index.html)(2015年7月21日アクセス)
2)日本赤十字社血液事業本部医薬情報課:輸血情報.0811-116,2008(http://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/iyakuhin_yuketuj0811-116_090805.pdf)(2015年7月21日アクセス)
3)前田義章,村上和子,藤木孝一:自己血輸血普及のための地域医療機関への血液センターの援助.Prog Med 20:289-292,2000
4)高折益彦(編著):新自己血輸血,改訂第3版.Ⅱ自己血輸血の意義と種類 本邦における自己血輸血.克誠堂,pp21-27,2006
5)日本赤十字社血液事業本部学術情報課:輸血情報.1410-139,2014(http://www.jrc.or.jp/mr/news/pdf/iyakuhin_yuketuj1410-139_141117.pdf#search)(2015年7月21日アクセス)
6)日本赤十字社血液事業本部学術情報課:輸血情報.0811-116,2008(http://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/iyakuhin_yuketuj0811-116_090805.pdf#search)(2015年7月21日アクセス)
7)厚生労働省医薬食品局血液対策課:輸血療法の実施に関する指針,平成17年9月(平成26年11月一部改正)
8)脇本信博(編著):実践・輸血マニュアル.医薬ジャーナル,2012
9)高折益彦(編著):新自己血輸血,改訂第3版.克誠堂,2006
10)厚生労働省医薬食品局血液対策課:血液製剤の使用指針,平成17年9月(平成26年11月一部改正)
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15)高折益彦(編著):新自己血輸血,改訂第3版.Ⅶ 小児の自己血輸血.克誠堂,2006
16)高橋考喜(編):自己血輸血実施上のマネジメント.8.小児科.医薬ジャーナル,2003
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