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新しく届出義務の生じた感染症
著者: 鈴木里和1
所属機関: 1国立感染症研究所細菌第二部
ページ範囲:P.367 - P.370
文献購入ページに移動■カルバペネム耐性腸内細菌科細菌をめぐる近年の動向
平成26(2014)年9月19日の感染症法施行規則改正によって,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae:CRE)感染症が5類全数把握疾患に追加された.カルバペネム系抗菌薬は,グラム(Gram)陰性桿菌による感染症の治療において最も重要な抗菌薬である.
2010年に,その前年に報告されたばかりの新型の耐性菌であるNDM(New Delhi metallo-β-lactamase)型メタロ-β-ラクタマーゼ(metallo-β-lactamase:MBL)産生腸内細菌科細菌が,わずか数年の間に世界各国に急速に広まっていたことが報告された1).腸内細菌科細菌である大腸菌や肺炎桿菌は,尿路感染症や胆道系感染症の起炎菌として上位にくる菌種であり,重篤な基礎疾患のない人でも罹患しうる感染症の起因菌として,分離数も多い.またMBLは,モノバクタム系抗菌薬以外は,カルバペネム系も含む全てのβ-ラクタム系抗菌薬を分解する.そのためMBL産生菌は,グラム陰性菌感染症の治療に重要なβ-ラクタム系抗菌薬に汎耐性となる.このような薬剤耐性菌の出現と急速な拡散は,これまで以上に薬剤耐性菌が公衆衛生学的な脅威であることを知らしめる事例であった.
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