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文献詳細

雑誌文献

検査と技術44巻11号

2016年10月発行

文献概要

FOCUS

わが国における麻疹対策の現状と課題

著者: 駒瀬勝啓1

所属機関: 1国立感染症研究所ウイルス第3部

ページ範囲:P.1046 - P.1048

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はじめに

 麻疹は麻疹ウイルスによる,発熱,発疹を伴う急性の呼吸器感染症である.麻疹ウイルスは空気感染,飛沫感染などで伝播し,その感染力は人の感染症のなかでも最も強いものの一つである.麻疹に対する十分な免疫をもたない人には,老若男女を問わず,容易に感染する.感染者のおよそ1/3が合併症を起こし,時として死亡の原因となる.また,亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる致死性の脳炎を起こすこともある.2014年においても,世界でおよそ11万人が麻疹によって死亡したと推定され,いまだ人類に深刻な影響をもつ感染症である1)

 2000年の国連ミレニアム・サミットで,2015年までに達成すべき目標の一つとして,乳幼児死亡率の削減が掲げられた.2000年当時,麻疹による死亡者数は54万人を超え,その多くが5歳未満であったこと1),また効果,安全性,経済性に優れたワクチンが存在することなどから,2001年から世界保健機関(World Health Organization:WHO)を中心として,“Measles Initiative”と呼ばれる麻疹の排除を目指す取り組みが開始された.

 本稿では,わが国における麻疹排除の状況と今後の課題について述べる.

参考文献

1)Perry TR, Murray JS, Gacic-Dobo M, et al : Progress towards regional measles elimination, worldwide, 2000-2014. Wkly Epidemiol Rec 90 : 623-631, 2015
2)多屋馨子:麻疹・風疹全数把握疾患への改訂と定期麻疹風疹予防接種第3期,第4期の追加.IASR 29:189-190,2008
3)駒瀬勝啓:日本の麻疹の状況と麻疹排除の進捗.Mod Media 61:81-90,2015
4)国立感染症研究所感染症疫学センター:特集 麻疹・風疹/先天性風疹症候群 2016年3月現在.IASR 37:59-61,2016
5)World Health Organization Western Pacific Region : Guideline on verification of measles and rubella elimination in the western pacific region. WHO, Geneva, 2013(http://www.wpro.who.int/immunization/documents/measles_elimination_verification_guidelines_2013.pdf?ua=1)(2016年5月18日アクセス)
6)駒瀬勝啓:麻疹検査診断法とその問題点.小児科 52:1273-1280,2011
7)厚生労働省健康局結核感染症課:麻しんに関する特定感染症予防指針の改正について.IASR 34:39-40,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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