検査と技術44巻6号

2016年06月発行

連載 忘れられない症例から学ぶ超音波検査・10

子宮平滑筋肉腫

著者： 木下博之¹

所属機関： ¹紀南病院中央臨床検査部

ページ範囲：P.484 - P.491

はじめに

　子宮に生じる病変の多くは良性平滑筋腫瘍である子宮筋腫であり，女性の20〜30％にみられます^1）．それに対し子宮肉腫は，子宮体部悪性腫瘍の約2〜5％とまれな腫瘍で^2），組織型は主に癌肉腫，平滑筋肉腫，内膜間質肉腫の3群に分類されます．子宮に限局した早期のものでも5年生存率50％と予後が悪く^3），早期発見，早期治療が重要な疾患です．しかし，確立した術前診断法はなく，超音波検査でも変性筋腫との鑑別に苦慮することが多い疾患です．今回，直腸癌手術後に外科外来で経過観察中に発見され，過去の検査所見を経時的に比較することが診断に有用であった子宮平滑筋肉腫の症例を経験したので提示したいと思います．

参考文献

1）高野忠夫：第2章　婦人科腫瘍分野　E．その他の婦人科悪性腫瘍　子宮肉腫の画像診断．産と婦　82：254-257，2015

2）八杉利治：婦人科悪性腫瘍の診断治療アップデート　子宮体がん　子宮肉腫の診断と治療．産婦の実際　61：389-394，2012

3）廣木恵理，永瀬智，八重樫伸生：腫瘍性疾患　体部腫瘍　子宮肉腫．日本臨牀　67：242-246，2009

4）大槻愛，大槻健郎，八重樫伸生：婦人科がんの最新医療　PART. 3 子宮体がんの最新医学．子宮体がんと子宮肉腫の診断．からだの科学　274：70−75，2012

5）井上陽子，中川博之，倉橋崇，他：巨大変性子宮筋腫との鑑別を要した子宮平滑筋肉腫の1例．埼玉産婦会誌　42：99-103，2012

6）宮本強，塩沢丹里：婦人科領域における超音波診断　子宮疾患の超音波診断7　子宮肉腫．臨婦産　64：435-437，2010

7）川村直樹，石河修：4．婦人科腫瘍学　4．子宮肉腫．佐藤和雄，藤本征一郎（編）：臨床エビデンス婦人科学．メジカルビュー社，pp384-391，2003

8）Kurjak A, Kupesic S, Shalan H, et al : Uterine sarcoma : a report of 10 cases studied by transvaginal color and pulsed Doppler sonography. Gynecol Oncol　59：342-346，1995