検査と技術45巻10号

2017年10月発行

病気のはなし

パスツレラ感染症

著者： 荒島康友¹

所属機関： ¹日本大学医学部病態病理学系臨床検査医学分野

ページ範囲：P.1110 - P.1116

文献概要

Point

●ペット感染症は約30種類であり，パスツレラ症例数が最も多いと考えられます．パスツレラ感染症は，ペット感染症の指標ともいえる感染症です．

●本症はパスツレラ属菌による感染症で，ペットをはじめ哺乳動物の保菌率が著しく高率です．

●イヌ，ネコによる咬搔傷による感染（55％），呼吸器系の感染（27％），その他，身体各部位の感染があり，軽症例から死亡例まで存在しています．

●多くが非特異的症状で，検査・診断は検体からの本菌の分離です．そのため診断には医師に「パスツレラ感染症ではないか？」と疑ってもらう必要があります．

●β-ラクタム系を主に，多くの抗菌薬が有効です．

●予防は，①ペットに口を舐めさせない，②ペットと幼少児だけにしない，③ヒトの基礎疾患を管理する，④寝室にペットを入れない，です．

参考文献

1）荒島康友：パスツレラ感染症．木村哲，喜田宏（編）：人獣共通感染症，改訂3版．医歯薬ジャーナル社，pp318-322，2016

2）Takeda S, Arashima Y, Kato K, et al : A case of Pasteurella haemolytica sepsis in a patient with mitral valve disease who developed a splenic abscess. Scand J Infect Dis　35：764-765，2003

3）Arashima Y, Yakubo S, Ueda Y, et al : A first case of abnormal sensation in the throat caused by Pasteurella canis. Int Med J　20：701-702，2013

4）荒島功，土屋達行，熊坂一成，他：人畜共通感染症としての外科材料およびイヌ・ネコの口腔内より分離されたPasteurella multocidaに関する検討．感染症誌　60：311-314，1986

5）荒島康友：解説　パスツレラ症．感染症内科　2：185-194，2014

6）荒島康友：『ヒトとペットの共通感染症』の【質・量に変化】—うつ様症状，登校拒否，咽喉頭違和感症，等　「病気未満，健康以下！」，One Healthレクチャー Animal 3．感染症誌（臨時増刊号）　90：205，2016