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文献詳細

雑誌文献

検査と技術45巻12号

2017年12月発行

文献概要

トピックス

網羅的がん遺伝子解析に基づく,がん個別化治療の推進

著者: 柳田絵美衣1 西原広史12

所属機関: 1北海道大学病院がん遺伝子診断部 2国立病院機構北海道がんセンターがんゲノム医療センター

ページ範囲:P.1310 - P.1314

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はじめに

 近年,断片化された核酸を利用したゲノミクス解析技術が飛躍的に発展したことで,ゲノム研究のみならず,臨床検査として行う遺伝子診断のパラダイムシフトが起こった.特にがん治療においては,個々の症例における責任遺伝子(ドライバー遺伝子)を同定することで最適な分子標的治療薬を適応する,precision medicine(精密医療)の臨床実装が進められている.

 がんに確認される遺伝子異常には,変異・挿入・欠失・増幅に加えて,染色体レベルで発生する転座などが含まれている.ヒトでは約2万数千個の遺伝子の存在が明らかにされているが,がんの発症や進展などにかかわる遺伝子は20〜400個程度と考えられている.こうした診療にかかわる遺伝子を日常検査として解析することをクリニカルシーケンスと呼ぶが,今後の主流は次世代シーケンサー(next-generation sequencer:NGS)などを用いた網羅的遺伝子解析となることは疑いがない.従来型のシーケンサーがA(アデニン),T(チミン),G(グアニン),C(シトシン)の塩基配列を1次元的に1塩基ずつ読み取っていくのに対し,NGSでは多数の核酸断片の塩基配列を3次元的に読み取ることで,数百万倍の速度で解析ができるようになり,機種によってはヒトの全ゲノムをわずか数日程度で解析し終えることができる時代となった1,2)

参考文献

1)菅野純夫,鈴木穣(監):次世代シークエンサー—目的別アドバンストメソッド.学研メディカル秀潤社,pp9-13,2012
2)西原広史,赤羽俊章,毛利普美:FFPE検体を利用した次世代シークエンサーによるクリニカルシークエンス.検と技 43:458-463,2015
3)林秀幸,小松嘉人,秋田弘俊,他:がん遺伝子診断外来—院内完結型網羅的がん遺伝子検査(CLHURC検査)を用いたクリニカルシークエンスの臨床応用.最新医 72:381-387,2017
4)西原広史:ゲノム研究用病理組織検体取扱い規程 ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)標本の作製.一般社団法人病理学会,pp69-92,2016
5)西原広史:革新的バイオ医療と化学 ゲノム医療を切り拓くクリニカルバイオバンク.化学工業 68:17-23,2017
6)西原広史:iPSバンクを含む国内のバイオバンクの現状と課題 ゲノム医療を切り拓くクリニカルバイオバンクの社会実装.臨病理 65:167-172,2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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