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網羅的がん遺伝子解析に基づく,がん個別化治療の推進
著者: 柳田絵美衣1 西原広史12
所属機関: 1北海道大学病院がん遺伝子診断部 2国立病院機構北海道がんセンターがんゲノム医療センター
ページ範囲:P.1310 - P.1314
文献購入ページに移動近年,断片化された核酸を利用したゲノミクス解析技術が飛躍的に発展したことで,ゲノム研究のみならず,臨床検査として行う遺伝子診断のパラダイムシフトが起こった.特にがん治療においては,個々の症例における責任遺伝子(ドライバー遺伝子)を同定することで最適な分子標的治療薬を適応する,precision medicine(精密医療)の臨床実装が進められている.
がんに確認される遺伝子異常には,変異・挿入・欠失・増幅に加えて,染色体レベルで発生する転座などが含まれている.ヒトでは約2万数千個の遺伝子の存在が明らかにされているが,がんの発症や進展などにかかわる遺伝子は20〜400個程度と考えられている.こうした診療にかかわる遺伝子を日常検査として解析することをクリニカルシーケンスと呼ぶが,今後の主流は次世代シーケンサー(next-generation sequencer:NGS)などを用いた網羅的遺伝子解析となることは疑いがない.従来型のシーケンサーがA(アデニン),T(チミン),G(グアニン),C(シトシン)の塩基配列を1次元的に1塩基ずつ読み取っていくのに対し,NGSでは多数の核酸断片の塩基配列を3次元的に読み取ることで,数百万倍の速度で解析ができるようになり,機種によってはヒトの全ゲノムをわずか数日程度で解析し終えることができる時代となった1,2).
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