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雑誌文献

検査と技術45巻2号

2017年02月発行

文献概要

トピックス

バイオマーカーとしてのエクソソームの将来性

著者: 増川陽大1 中山ハウリー亜紀2 飯島史朗2 濱田悦子1 前川真人13

所属機関: 1浜松医科大学医学部附属病院検査部 2文京学院大学保健医療技術学部臨床検査学科 3浜松医科大学医学部臨床検査医学講座

ページ範囲:P.100 - P.102

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はじめに

 1983年に,羊の網赤血球から分泌された直径40〜100nmの小胞がエクソソームと名づけられたことが始まりとされ,そこからエクソソーム研究が発展してきた.今日では,ほとんどの細胞から,血液中や尿中へエクソソームが分泌されることが明らかにされている.エクソソームの生成は,エンドサイトーシスにより細胞膜が内側に陥入することで始まる.このとき,細胞膜上に存在する物質も陥入し,細胞内に形成された前期エンドソームが,細胞成分を内側に含みながら腔内膜小胞を多数含む後期エンドソーム(多胞体)を形成する.多胞体の一部は,リソソームと融合する一方で,細胞膜と融合することによって,細胞内成分を含んだ膜小胞が細胞外へと分泌される(図1,2).この小胞がエクソソームと呼ばれている.

 エクソソームの表面には,テトラスパニンであるCD9,CD63,CD81などが存在し,エクソソーム表面マーカーとして知られている.またエクソソーム内には,起源の細胞成分が含まれており,さまざまな蛋白質や核酸が内在することが明らかとなっている.このように,外側は起源の細胞の一部をもち,内側には細胞質にある物質を含むことで,細胞構造の位置関係を保ち,さまざまな情報をもつ複合体であることがエクソソームの特徴である.近年,内包する物質のなかでRNA(ribonucleic acid)の転写産物であるmRNA(messenger RNA)やmiRNA(micro RNA)が発見されたことにより,細胞の老廃物と思われていたエクソソームが,癌の転移や増悪の補助因子となると考えられ,注目されている1)

参考文献

1)Vlassov AV, Magdaleno S, Setterquist R, et al : Exosomes : current knowledge of their composition, biological functions, and diagnostic and therapeutic potentials. Biochim Biophys Acta 1820:940-948,2012
2)Kahlert C, Kalluri R : Exosomes in tumor microenvironment influence cancer progression and metastasis. J Mol Med (Berl) 91:431-437,2013
3)Raimondi L, De Luca A, Amodio N, et al : Involvement of multiple myeloma cell-derived exosomes in osteoclast differentiation. Oncotarget 6:13772-13789,2015
4)吉岡祐亮,落谷孝広:目に見えぬエクソソームでどこまで診ることができるか?—体液診断の可能性.実験医 34:1379-1384,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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