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臨床検査のピットフォール
ミオグロビン尿の色調に注意を!
著者: 山本裕之1
所属機関: 1大阪赤十字病院臨床検査科部
ページ範囲:P.580 - P.583
文献購入ページに移動横紋筋融解症などでは,筋細胞から流出した多量のミオグロビン(myoglobin:MYO)は尿細管を傷害する.尿細管腔で形成されたMYO円柱が,尿細管を閉塞することで急性尿細管壊死を引き起こす1).全急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の7〜10%が横紋筋融解症によるもので,横紋筋融解症のうち13〜50%がAKIを発症するとの報告がある2).MYO尿は褐色〜赤紫色などさまざまな色調で表現されており3),学生のときにはコーラ色を呈していると教わった方もいると思う.
先日,当院で横紋筋融解症の患者が救急搬送されてきた際に,尿試験紙で潜血(3+)であったが,尿沈渣には赤血球(red blood cell:RBC)はなかったため「溶血?」のコメントで臨床にデータを送付した.臨床側から横紋筋融解症の疑いがあり,「尿中にMYOが出ていないか」との問い合わせがあった.担当者はMYO尿をみた経験がなく,「色調から判断するにMYO尿の可能性は低いと思います」と返答した.しかし後ほど測定した結果,血中MYO濃度は約2.7万ng/dLであり,尿中MYO濃度は約8万ng/dLと異常高値であった.早急に輸液による腎保護療法を開始したために,AKIから慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に至りはしなかったものの非常に危険な状態であった.
このように色調のみで判断することは非常に危険な行為であり,MYO尿=褐色〜赤紫色という思い込みは捨てるべきではないかと考える.
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