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文献詳細

雑誌文献

検査と技術47巻10号

2019年10月発行

文献概要

トピックス

抗菌薬適正使用支援加算

著者: 髙橋孝1

所属機関: 1北里大学大学院感染制御科学府感染症学研究室

ページ範囲:P.1166 - P.1169

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AS加算が設定されるまでの経緯

 2018年度診療報酬改定1)では,薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)対策を推進することを目的として,抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship:AS)という観点に基づき,感染防止対策加算が見直された.すなわち,“AS加算”(100点,入院初日)が導入され,院内にASチーム(AS team:AST)を設置することが求められている.ASとは,主治医が抗菌薬を使用する際,①個々の患者に対して最大限の治療効果を導くとともに,②有害事象をできるだけ最小限にとどめ,③いち早く感染症治療が完了するために,医師・薬剤師・臨床検査技師・看護師といった4職種の連携を介して主治医の支援を行うことである2).ASTは専任の4職種で構成され,内1名は専従と規定されている.臨床微生物検査を担当する臨床検査技師は3年以上の病院勤務経験が必要となる.

 AS加算が設定されるまでの経緯を表1に示す.耐性菌による感染症患者の増加に伴い,2050年に脅威的に同死亡者数が増加すると想定(オニールレポート)され3),世界保健機関がグローバルなAMR対策アクションプランを提唱した4).日本5)や他国もナショナルAMR対策アクションプランを公表し,その後日本では「抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」2)や「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告2017」6)が報告された.ワンヘルス(図1)という考え方は人,動物(伴侶動物・食用動物・野生動物など),それを取り巻く環境(植物・土壌・河川など)を地球規模で包括し,維持していく健康管理を意味している7).注意すべきことは,人,動物,環境といった分野に対して薬剤や物質(抗菌薬・動物用抗菌性物質・植物用抗菌性物質など)が投与され,耐性菌が循環しているという点である.そして,AS加算や小児科診療でのかぜ症候群に対する抗菌薬不使用への加算である“小児AS加算”設定1)へと至った.

参考文献

1)厚生労働省:平成30年度診療報酬改定 Ⅱ-1-5)感染症対策や薬剤耐性対策,医療安全対策の推進(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/siryo5.pdf)(2019年5月27日アクセス)
2)8学会合同抗微生物薬適正使用推進検討委員会(委員長:二木芳人):抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス.日化療法会誌 65:650-687,2017(http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/kobiseibutuyaku_guidance.html)(2019年7月9日アクセス)
3)厚生労働省:厚生労働省におけるAMRの取組(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000189799.pdf)(2019年5月27日アクセス)
4)World Health Organization : Global action plan on antimicrobial resistance(https://www.who.int/antimicrobial-resistance/global-action-plan/en/)(2019年5月27日アクセス)
5)国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議:薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120769.pdf)(2019年5月27日アクセス)
6)薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会:薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2017(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000184145.pdf)(2019年5月27日アクセス)
7)Centers for Disease Control and Prevention : One Health(https://www.cdc.gov/onehealth/index.html)(2019年5月27日アクセス)
8)Morency-Potvin P, Schwartz DN, Weinstein RA : Antimicrobial Stewardship : How the Microbiology Laboratory Can Right the Ship. Clin Microbiol Rev. 30:381-407,2016
9)Messacar K, Parker SK, Todd JK, et al : Implementation of Rapid Molecular Infectious Disease Diagnostics : the Role of Diagnostic and Antimicrobial Stewardship. J Clin Microbiol 55:715-723,2017
10)日本臨床微生物学会提言作成ワーキンググループ:ICT・AST活動で求められる臨床微生物検査室の役割—認定臨床微生物検査技師の重要性.日臨微生物誌 29:53-57,2019.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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