文献詳細
臨床検査のピットフォール
血液培養陽性となった検体の塗抹検査で菌が認められない場合,直ちに陰性と判断してはダメ
著者: 川上剛明1
所属機関: 1順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床検査部
ページ範囲:P.1400 - P.1402
文献概要
血流感染症は今日においても死亡率の高い重篤な疾患である.血液培養検査は血流感染症の診断にとって最も重要である.血液培養検査結果は診断,患者の治療や転帰に大きく影響するため,正確性と迅速性が求められる.
血液培養検査が陽性となった際,最初に実施,報告されるのがGram染色による塗抹検査の結果である.塗抹検査結果報告の重要性は,CUMITECHの「血液培養検査ガイドライン」1)や日本臨床微生物学会の「血液培養検査ガイド」2)などで述べられている3,4).
血液培養検査では全自動血液培養装置が広く普及している.装置ごと専用のボトルに血液を接種して装塡すると,培養とともに菌の発育を経時的にモニタリングし,陽性か陰性かを自動的に判定する.全自動培養装置による菌発育の検出原理は,菌の増殖に由来する炭酸ガス(CO2)センサーによるCO2量の増加かボトル内ガス圧変化の検出である1,2).
血液培養陽性検体の検査は,装置から菌発育の陽性サインが出たときから始まる.最初にボトル内培養液の塗抹標本を作製してGram染色を行うと同時に,血液寒天培地などへの分離培養,直接法による薬剤感受性検査を行う.
しかし,Gram染色標本の鏡検において,菌が認められないことが経験される.このようなときに,短絡的に“陰性または偽陽性反応”と判断してはならない.
そこで本稿では,血液培養陽性検体の塗抹検査で菌が認められない場合の原因と,その対応について解説する.
参考文献
掲載誌情報