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文献詳細

雑誌文献

検査と技術47巻12号

2019年12月発行

臨床検査のピットフォール

血液培養陽性となった検体の塗抹検査で菌が認められない場合,直ちに陰性と判断してはダメ

著者: 川上剛明1

所属機関: 1順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床検査部

ページ範囲:P.1400 - P.1402

文献概要

はじめに

 血流感染症は今日においても死亡率の高い重篤な疾患である.血液培養検査は血流感染症の診断にとって最も重要である.血液培養検査結果は診断,患者の治療や転帰に大きく影響するため,正確性と迅速性が求められる.

 血液培養検査が陽性となった際,最初に実施,報告されるのがGram染色による塗抹検査の結果である.塗抹検査結果報告の重要性は,CUMITECHの「血液培養検査ガイドライン」1)や日本臨床微生物学会の「血液培養検査ガイド」2)などで述べられている3,4)

 血液培養検査では全自動血液培養装置が広く普及している.装置ごと専用のボトルに血液を接種して装塡すると,培養とともに菌の発育を経時的にモニタリングし,陽性か陰性かを自動的に判定する.全自動培養装置による菌発育の検出原理は,菌の増殖に由来する炭酸ガス(CO2)センサーによるCO2量の増加かボトル内ガス圧変化の検出である1,2)

 血液培養陽性検体の検査は,装置から菌発育の陽性サインが出たときから始まる.最初にボトル内培養液の塗抹標本を作製してGram染色を行うと同時に,血液寒天培地などへの分離培養,直接法による薬剤感受性検査を行う.

 しかし,Gram染色標本の鏡検において,菌が認められないことが経験される.このようなときに,短絡的に“陰性または偽陽性反応”と判断してはならない.

 そこで本稿では,血液培養陽性検体の塗抹検査で菌が認められない場合の原因と,その対応について解説する.

参考文献

1)Baron EJ,Weinstein MP,Dunne WM,他(著),松本哲哉,満田年宏(訳):CUMITECH 1C 血液培養検査ガイドライン.医歯薬出版,2007
2)浅利誠志,満田年宏,細川直登,他:血液培養検査ガイド.日臨微生物誌 23(Suppl 1):1-142,2013
3)川上剛明,荒井ひろみ,大木まゆみ,他:血液培養検査の24時間対応による診療支援.医学検査 61:523-528,2012
4)Uehara Y, Yagoshi M, Tanimichi Y, et al : Impact of reporting gram stain results from blood culture bottles on the selection of antimicrobial agents. Am J Clin Pathol 132:18-25,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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