icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術47巻4号

2019年04月発行

臨床検査のピットフォール

輸血患者におけるB型肝炎ウイルス感染患者のピットフォール

著者: 廣瀬有香1 名倉豊1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院輸血部

ページ範囲:P.544 - P.547

文献概要

はじめに

 B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)感染者は,日本では人口の約1%1)程度存在すると考えられている.売血が主要な輸血供給だった1960年代には輸血を受けた患者のなかで半数以上が肝炎を発症したといわれており,輸血後肝炎は非溶血性輸血反応の1つとして古くから問題となってきた.その後,売血から献血への完全移行,HBV関連マーカー〔HBs(hepatitis B surface)抗原,HBs抗体,HBc(hepatitis B core)抗体〕の血清学的検査および核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)の導入など,検査項目の追加および検査技術の向上により輸血によるHBV感染率は極めて低く,輸血用血液製剤の安全性は高まっている.

 しかしながら,HBVに感染してから検査陽性になるまでの期間(ウインドウ期)の存在により,献血ドナーがHBVに感染してから検査が陽性になるまでに採血された輸血用血液製剤によって感染するリスクはいまだ存在する.そのため,「輸血療法の実施に関する指針」2)では,受血者の輸血前検査としてHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体を測定し,これらが陰性だった場合に輸血後検査として3カ月後にHBVのNATを行うことを推奨している.推奨されているのはNATだけだが,実際にはHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体の血清学的検査が同時期に依頼されていることが多く,輸血患者の感染症検査にあたる機会は多々あるのではないのだろうか.

 感染症検査を担当するうえで輸血後肝炎を早期に発見することは,早期の治療介入および同一献血ドナーの輸血用血液製剤による感染拡大を防ぐために非常に重要である.一方,治療を受けている患者では初期感染以外にもHBV関連マーカーが陽転化するケースがあり,これらを正しく理解していないと結果を見誤ることがあるため注意が必要である.そのため,本稿では輸血前後のHBV関連マーカー検査における感染症検査解釈の注意点を示す.

参考文献

1)日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会(編):B型肝炎治療ガイドライン,第3版,2017(https://www.jsh.or.jp/files/uploads/HBV_GL_ver3__Sep13.pdf)(2019年2月5日アクセス)
2)厚生労働省医薬食品局血液対策課:輸血療法の実施に関する指針.平成17年9月(平成26年11月一部改正)
3)窪田哲朗,加藤亮二,藤田清貴,他(編):臨床検査学講座 免疫検査学,第2版.医歯薬出版,2010
4)Kawatani T, Suou T, Tajima F, et al : Incidence of hepatitis virus infection and severe liver dysfunction in patients receiving chemotherapy for hematologic malignancies. Eur J Haematol 67:45-50,2001
5)Kusumoto S, Tanaka Y, Suzuki R, et al : Monitoring of Hepatitis B Virus(HBV)DNA and Risk of HBV Reactivation in B-Cell Lymphoma : A Prospective Observational Study. Clin Infect Dis 61:719-729,2015
6)前田平生,大戸斉,岡崎仁(編):輸血学,改訂第4版.中外医学社,2018
7)齊藤誠司,河野真由,小松真由美,他:輸血ドナーからの移行抗体によりHBsおよびHBc抗体が陽転化した小児例.日輸血細胞治療会誌 60:533-538,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら