文献詳細
文献概要
Laboratory Practice 〈病理〉
尿細胞診におけるvimentin陽性細胞
著者: 大﨑博之1
所属機関: 1神戸大学大学院保健学研究科病態解析学領域
ページ範囲:P.927 - P.931
文献購入ページに移動はじめに
尿細胞診は,腎盂・尿管・膀胱の粘膜上皮に発生する腫瘍の発見,すなわち尿中の癌細胞の検出を主目的としている.一方で,尿細管上皮細胞など腎実質由来の細胞は,その形態や意義に関する知見に乏しかったこともあり,尿細胞診において軽視されてきた.
筆者らは約20年前から,尿細胞診標本に出現する尿細管上皮細胞の細胞学的特徴の検討を行ってきた1).その過程で,糸球体腎炎などの患者の尿中に再生異型を伴う尿細管上皮細胞(反応性尿細管上皮細胞)が出現すること,その形態が癌細胞に類似するため誤陽性の原因となっていることを見い出した2)(図1).さらに,その後の検討で,反応性尿細管上皮細胞と尿路上皮癌細胞の形態学的・免疫細胞化学的な鑑別点を解明してきた3〜9).特に免疫細胞化学において,反応性尿細管上皮細胞がvimentin陽性を示すことを発見し,vimentin陰性の尿路上皮癌細胞との鑑別に極めて有用であることを明らかにした3,4,7).
近年,学会などにおいて反応性尿細管上皮細胞とvimentinの反応性について発表されることも多くなり,その認識の広がりを実感している.しかし一方で,“vimentinは尿細管上皮細胞のマーカーである”などの誤解も生じている.本稿では,尿中に出現する各種上皮細胞と尿路上皮癌細胞におけるvimentinの反応性について解説する.
尿細胞診は,腎盂・尿管・膀胱の粘膜上皮に発生する腫瘍の発見,すなわち尿中の癌細胞の検出を主目的としている.一方で,尿細管上皮細胞など腎実質由来の細胞は,その形態や意義に関する知見に乏しかったこともあり,尿細胞診において軽視されてきた.
筆者らは約20年前から,尿細胞診標本に出現する尿細管上皮細胞の細胞学的特徴の検討を行ってきた1).その過程で,糸球体腎炎などの患者の尿中に再生異型を伴う尿細管上皮細胞(反応性尿細管上皮細胞)が出現すること,その形態が癌細胞に類似するため誤陽性の原因となっていることを見い出した2)(図1).さらに,その後の検討で,反応性尿細管上皮細胞と尿路上皮癌細胞の形態学的・免疫細胞化学的な鑑別点を解明してきた3〜9).特に免疫細胞化学において,反応性尿細管上皮細胞がvimentin陽性を示すことを発見し,vimentin陰性の尿路上皮癌細胞との鑑別に極めて有用であることを明らかにした3,4,7).
近年,学会などにおいて反応性尿細管上皮細胞とvimentinの反応性について発表されることも多くなり,その認識の広がりを実感している.しかし一方で,“vimentinは尿細管上皮細胞のマーカーである”などの誤解も生じている.本稿では,尿中に出現する各種上皮細胞と尿路上皮癌細胞におけるvimentinの反応性について解説する.
参考文献
1)大﨑博之,岸本修次,高田多津男,他:尿細管上皮細胞の細胞学的検討.日臨細胞会誌 39:437-444,2000
2)大﨑博之,香川昭博,中村宗夫,他:良悪の鑑別を要する反応性尿細管上皮細胞が出現したネフローゼ症候群の1例.日臨細胞会誌 45:199-202,2006
3)Ohsaki H, Haba R, Matsunaga T, et al : Cytomorphologic and immunocytochemical characteristics of reactive renal tubular cells in renal glomerular disease. Acta Cytol 52:297-303,2008
4)Ohsaki H, Haba R, Matsunaga T, et al : 'Cannibalism' (cell phagocytosis) does not differentiate reactive renal tubular cells from urothelial carcinoma cells. Cytopathology 20:224-230,2009
5)Ohsaki H, Hirakawa E, Kagawa K, et al : Value of computer-assisted quantitative nuclear morphometry for differentiation of reactive renal tubular cells from low-grade urothelial carcinoma. Cytopathology 21:334-338,2010
6)Ohsaki H, Hirakawa E, Kushida Y, et al : Can cytological features differentiate reactive renal tubular cells from low-grade urothelial carcinoma cells? Cytopathology 21:326-333,2010
7)Ohsaki H, Hirakawa E, Nakamura M, et al : Expression of vimentin and high-molecular-weight cytokeratin (clone 34ßE12) in differentiating reactive renal tubular cells from low-grade urothelial carcinoma cells in voided urine. Cytopathology 22:247-252,2011
8)大﨑博之,羽場礼次,平川栄一郎:尿細胞診に出現する反応性尿細管上皮細胞の細胞学的特徴.検と技 37:391-393,2009
9)大﨑博之,羽場礼次,平川栄一郎:尿細胞診における尿細管上皮細胞の判定法と鑑別.病理と臨 27:1191-1196,2009
10)Kalluri R, Weinberg RA : The basics of epithelial-mesenchymal transition. J Clin Invest 119:1420-1428,2009
11)佐伯勇輔,大﨑博之,此上武典,他:反応性尿路上皮細胞と尿路上皮癌細胞の鑑別におけるvimentinの有用性について.医学検査 66:1-7,2017
processed urine cytology helps to detect kidney disease. Cytopathology 27:43-49,2016
13)Fujita T, Sofue T, Moritoki M, et al : Urinary WT1-positive cells as a non-invasive biomarker of crescent formation. Cytopathology 28:524-530,2017
掲載誌情報