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文献詳細

雑誌文献

検査と技術48巻12号

2020年12月発行

文献概要

FOCUS

臨床検査技師の新たな役割—未病領域での可能性

著者: 丸山篤芳1 岩崎佐知子2 吉田博34

所属機関: 1松阪地区医師会臨床検査センター 2富士市立中央病院診療技術臨床検査科 3東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座 4東京慈恵会医科大学附属柏病院中央検査部

ページ範囲:P.1298 - P.1300

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はじめに

 日常生活の利便性が向上し,超高齢社会を迎えた現在,医療が扱う主な疾患は,加齢とともに発症率が上昇する悪性新生物や,食生活・運動・喫煙などの生活習慣や嗜好を起因とする生活習慣病などの慢性疾患が中心となっている.これら疾患の多くは遺伝的素因と個々の環境要因が複雑に絡み合って発症するため,治療に要する期間や費用などが不確定で,完治が期待できないことも少なくない.

 未病とは健康と病気の中間概念であり,健康からの逸脱に始まり,病気に至るまでの領域を指す.この“未病”という言葉は約2,000年前に記された中国最古の医学書である『黄帝内経』に初めて登場し,未病の時期を捉えて治すことのできる人が医療人として最高の聖人であると記述されている.日本では,1712年に貝原益軒が『養生訓』を記し,一般向けに養生についてわかりやすく解説している.これに倣えば,未病対策とは,発症前の生活習慣や体質の改善を図ることによる疾病予防,病変の拡大進展の阻止,そして再発予防などを講ずることである1).これらは慢性疾患対策が主になっている現代医療にとって重要な方法論である.さらに日本未病学会では,“自覚症状はないが検査では異常がある状態(西洋型未病)”と“自覚症状はあるが検査では異常がない状態(東洋型未病)”を併せて未病としており(図1),臨床検査は未病を評価するために必要不可欠と位置付けられている2)

参考文献

1)謝心範:養生の智慧と気の思想—貝原益軒に至る未病の文化を読む.講談社,2018
2)日本未病学会:「未病期」の状態(https://www.j-mibyou.or.jp/mibyotowa.htm#mibyonohi)(2020年8月27日アクセス)
3)日本臨床検査医学会ガイドライン作成委員会:基準範囲・臨床判断値.臨床検査のガイドラインJSLM2018.宇宙堂八木書店,pp12-22,2018
4)三宅一徳:基準値(基準範囲)とカットオフ値の考え方.日内会誌 94:2467-2472,2005
5)櫻林郁之介,吉田博,福生吉裕,他:臨床検査と未病—健康社会へのポテンシャル.臨検 60:36-42,2016
6)日本WHO協会:健康の定義について(http://www.japan-who.or.jp/commodity/kenko.html)(2020年8月27日アクセス)
7)Bergson H(著),竹内信夫(訳):意識と生命活動.新訳ベルクソン全集5 精神のエネルギー.白水社,pp9-42,2001
8)Foucault M(著),渡辺守章(訳):死に対する権力と生に対する権力.知への意志.新潮社,pp169-203,1986
9)岩崎佐知子,丸山篤芳:臨床検査技師の新たな役割—社会における未病.日未病システム会誌 25:56-60,2019
10)西田幾多郎:生命.小林敏明(編):近代日本思想選 西田幾多郎.筑摩書房,pp464-545,2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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