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文献詳細

雑誌文献

検査と技術48巻3号

2020年03月発行

文献概要

増刊号 採血のすべて—手技から採血室の運用まで徹底解説 Ⅲ 採血手技と検査値

体位の影響

著者: 清水慶久1 市原清志2

所属機関: 1九州保健福祉大学生命医科学部生命医科学科 2山口大学大学院医学系研究科生体情報検査学

ページ範囲:P.243 - P.247

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はじめに

 臨床検査は,臨床の現場で病気の診断,治療経過のモニター,予後判定に利用される.筆者らは世界規模基準値調査とともに,臨床検査値の変動についてあらためてより詳細かつ信頼性の高い結果が得られる条件で体系的に分析を行い,地域差分析,共有基準範囲の設定を行ってきた1)

 しかし,臨床検査の値は病態変動だけでなく分析前の条件でも変化し,分析前変動はさらに生理的変動と,測定技術変動に分けられる.分析前変動に関する研究報告は数多く存在するが,そのほとんどは検査値が標準化される以前のデータであり,また分析条件も不十分なものが多い2,3)

 臨床検査値の分析前変動については,採血前の体位が臨床検査に及ぼす影響はよく知られているが,立位から坐位,臥位から坐位など,体位を変化させてから,その影響がなくなるまでにどの程度の時間が必要かについては,これまで詳細に調べられていない4,5).そこで筆者ら6)は,科学研究費助成事業〔基盤研究(C)(課題番号:25460688)「臨床検査分析前変動の系統的再評価とデータ・レポジトリーの構築」〕を受け,健常者を対象に,体位の変化と時間を厳密に制御し,多項目にわたって臨床検査値の変動要因を解析し報告した.

 本稿では,筆者らの調査研究のデータをもとに,臨床検査値の体位の変動による影響について,その要因別に変動機序と,その影響を受けやすい検査項目を系統的に整理して解説する.また,採血手技が臨床検査の測定値に与える影響についても十分な配慮がなされなければ,正確なデータを臨床に提供することはできない.2019年に日本臨床検査標準協議会のガイドラインが改訂され,標準採血法ガイドライン(GP4-A3)が発刊された7).そこには,採血手技が血液検査の測定値に与える影響について,まとめられている.ぜひ,こちらも参照されたい.

参考文献

1)清水慶久,市原清志:国際プロジェクトによる臨床検査値の地域差分析と共有基準範囲の設定.Med Technol 40:1129-1137,2012
2)濱崎直孝,高木康(編):臨床検査の正しい仕方—検体採取から測定まで.宇宙堂八木書店,2008
3)市原清志,河口勝憲(編):エビデンスに基づく検査診断実践マニュアル! 日本教育研究センター,2011
4)河口勝憲,市原清志:臨床検査項目の生理的変動.医学検査 64:143-154,2015
5)Lippi G, Salvagno GL, Lima-Oliveira G, et al : Postural change during venous blood collection is a major source of bias in clinical chemistry testing. Clin Chim Acta 440:164-168,2015
6)Shimizu Y, Ichihara K, Kouguchi K : Time required for resetting postural effects on serum constituents in healthy individuals. Clin Chim Acta 472:131-135,2017
7)日本臨床検査標準協議会:標準採血法ガイドライン(GP4-A3).日本臨床検査標準協議会,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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