文献詳細
文献概要
増刊号 採血のすべて—手技から採血室の運用まで徹底解説 Ⅳ 採血合併症と予防・対応法
血管迷走神経反応
著者: 入江仁1
所属機関: 1津軽保健生活協同組合健生病院救急集中治療部
ページ範囲:P.284 - P.289
文献購入ページに移動血管迷走神経反応(VVR)とは
血管迷走神経反応(vasovagal reaction:VVR)はストレス,強い疼痛,排泄,腹部内臓疾患などによる刺激が迷走神経求心枝を介して脳幹血管運動中枢を刺激し,心拍数の低下や血管拡張による血圧低下などをきたす生理的反応とされる.迷走神経運動枝は骨盤内臓器を除く全臓器に分布する.そのため,心拍数や血圧の変化以外にも嘔気,腹痛,発汗など多彩な症状を呈する1).具体的な誘因としては長時間の立位あるいは坐位姿勢,痛み刺激,不眠・疲労・恐怖などの精神的・肉体的ストレス,さらには人混みの中や閉鎖空間などの環境要因も挙げられる2).採血では坐位姿勢,穿刺による痛み刺激,穿刺されることへの恐怖,採血前に不眠や疲労があることなどが誘因となろう.
日本赤十字社はVVRを表13)のように軽症と重症に分類している.徐脈や低血圧が遷延すると,一時的に全脳虚血の状態となるため一過性の意識消失をきたす.この状態を失神と呼ぶ.VVRとして突然失神を呈することもあるが,失神に至ったVVR症例の3分の2は表13)の軽症に示されるような症状が予兆としてみられるとされている4).仮に失神に至っても,臥位をとらせることにより頭部への血流は回復するため,速やかに発症前と同等の意識レベルまで覚醒する.しかし,徐脈などの反応が極めて重度であったり,失神した患者を周囲の人が坐位や立位のまま支えていたりすると,全脳虚血の状態が続くため,痙攣や失禁にまで至ることがある(失神性痙攣:syncopal convulsion).
血管迷走神経反応(vasovagal reaction:VVR)はストレス,強い疼痛,排泄,腹部内臓疾患などによる刺激が迷走神経求心枝を介して脳幹血管運動中枢を刺激し,心拍数の低下や血管拡張による血圧低下などをきたす生理的反応とされる.迷走神経運動枝は骨盤内臓器を除く全臓器に分布する.そのため,心拍数や血圧の変化以外にも嘔気,腹痛,発汗など多彩な症状を呈する1).具体的な誘因としては長時間の立位あるいは坐位姿勢,痛み刺激,不眠・疲労・恐怖などの精神的・肉体的ストレス,さらには人混みの中や閉鎖空間などの環境要因も挙げられる2).採血では坐位姿勢,穿刺による痛み刺激,穿刺されることへの恐怖,採血前に不眠や疲労があることなどが誘因となろう.
日本赤十字社はVVRを表13)のように軽症と重症に分類している.徐脈や低血圧が遷延すると,一時的に全脳虚血の状態となるため一過性の意識消失をきたす.この状態を失神と呼ぶ.VVRとして突然失神を呈することもあるが,失神に至ったVVR症例の3分の2は表13)の軽症に示されるような症状が予兆としてみられるとされている4).仮に失神に至っても,臥位をとらせることにより頭部への血流は回復するため,速やかに発症前と同等の意識レベルまで覚醒する.しかし,徐脈などの反応が極めて重度であったり,失神した患者を周囲の人が坐位や立位のまま支えていたりすると,全脳虚血の状態が続くため,痙攣や失禁にまで至ることがある(失神性痙攣:syncopal convulsion).
参考文献
1)日本救急医学会:迷走神経反射.日本救急医学会用語集(http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/1103.htm)(2019年10月11日アクセス)
2)日本循環器学会,日本救急医学会,日本小児循環器学会,他:失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版),2012(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_inoue_h.pdf)(2019年10月11日アクセス)
3)日本赤十字社:採血基準書(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/11/s1126-18c.html)(2019年10月11日アクセス)
4)Graham LA, Kenny RA : Clinical characteristics of patients with vasovagal reactions presenting as unexplained syncope. Europace 3:141-146,2001
5)Shen WK, Sheldon RS, Benditt DG, et al : 2017 ACC/AHA/HRS Guideline for the Evaluation and Management of Patients With Syncope : A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society. Circulation 136:e60-e122,2017
6)日本赤十字社:平成15年度の採血副作用の分析.第2回「安全で安心な献血の在り方に関する懇談会」資料(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/11/dl/s1126-18c.pdf)(2019年10月11日アクセス)
7)日本赤十字社:LEG CROSS運動について(http://www.jrc.or.jp/donation/pdf/leg%20cross%20pdf.pdf)(2019年10月11日アクセス)
8)日本臨床検査標準協議会:標準採血法ガイドライン(GP4-A3).日本臨床検査標準協議会,2019
9)救急初療コース開発有志の会:救急初療コースT&Aテキストvol.1.2,2005(非売品)
10)入江仁:血管迷走神経反応への対処法を教えてください.Med Technol 48:52-54,2020
11)日本救急医学会:ICLSコース(https://www.icls-web.com/)(2019年12月3日アクセス)
掲載誌情報