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文献詳細

雑誌文献

検査と技術48巻3号

2020年03月発行

文献概要

増刊号 採血のすべて—手技から採血室の運用まで徹底解説 Ⅴ 採血室の運営と工夫

外来採血室における血糖負荷試験に対応した採血管供給システム

著者: 野々部亮子1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院検査部

ページ範囲:P.338 - P.341

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はじめに

 75g経口ブドウ糖負荷試験は,糖尿病前段階の耐糖能異常の発見,糖尿病の診断,および妊娠糖尿病のスクリーニング検査に欠かすことのできない,臨床上非常に有用性の高い検査である.被検者は空腹時に75gのブドウ糖溶液を服用し,その後経時的に採血を行い,血糖値,血中インスリン値,尿糖を測定する.

 東京大学医学部附属病院(以下,当院)では,外来患者の血糖負荷試験は外来採血室にて通常の採血業務と並行して実施している.依頼内容により採血開始から検査終了まで90〜300分を要するため,個々の患者によって採血回数が異なり,さらに検査開始時間は患者の来院時間によって決まるため,まちまちである.

 当院の1日の外来採血者数は1日平均で約970名であり1),外来採血患者の約90%は診察前検査であるため,採血開始時刻の8時10分から2時間ほどは患者が採血室に集中し,採血室の稼働がピークに達する.血糖負荷試験件数は年々増加傾向にあり,統計を開始した2008年は206件であったが2018年は508件で,全採血件数に占める割合はそれぞれ0.09%(206件/229,171件),0.22%(508件/226,728件)と増加している.

 血糖負荷試験は主に採血室専任スタッフが担当しているが,専任スタッフは他にも採血困難者や車いす患者,体の不自由な患者の対応,治験などさまざまな患者の対応を行っているため,必然的に血糖負荷試験への注意力が散漫となりやすい.特に採血患者数の多くなる午前中は,①採血業務の忙しい早朝の時間帯に血糖負荷試験採血が集中し,時間通りに採血ができない,②採血時刻に患者が不在の場合にスタッフが気づかず定時採血がなされない,③採血管の取り違いなど,さまざまなインシデントが過去に数件発生していた.この問題を解決するため,当院では通常の採血管供給システムに血糖負荷試験用の時間管理システムを追加し,運用を開始したのでご紹介したい.

参考文献

1)金子誠,曽根伸治,盛田和治,他:検査部採血室の管理・運営—採血業務における診療支援と患者サービス向上を目指して.日臨検自動化会誌 41:3-12,2016
2)曽根伸治,大久保滋夫,岡崎仁,他:採血システムの更新による外来採血室の待ち時間短縮への取り組み.日臨検自動化会誌 41:314-320,2016
3)盛田和治,金子誠,矢冨裕:これからの採血室の構築—早くて,うまくて,気持ちいい!? 検と技 35:1450-1454,2007
4)曽根伸治,盛田和治,名倉豊,他:新しいシステム導入による外来採血の効率化.日臨検自動化会誌 36:325-330,2011
5)金子誠,中尾博之,盛田和治,他:外来採血室の防災訓練—地震災害時の外来採血室での初期対応に関するシミュレーション.臨病理 61:1101-1106,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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