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ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体の適切な作製・保管方法の留意点
著者: 佐藤浩司1
所属機関: 1名古屋大学医学部附属病院病理部
ページ範囲:P.604 - P.607
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ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)検体とは,文字通りホルマリンで固定した検体を脱水脱脂後パラフィンへと置換し包埋処理をした検体のことで,病理診断を目的とした検査室で最も広く用いられている処理方法である.
このFFPE検体は,薄切後のヘマトキシリン・エオジン(hematoxylin-eosin:HE)染色や特殊染色を用いて形態学を基にした従来の病理診断,また免疫組織化学染色(免疫染色)やFISH(fluorescence in situ hybridization)法などを用いた分子病理診断に使用されてきた.近年ではその利用目的がさらに広がり,コンパニオン診断を目的とした免疫染色やFISH法,遺伝子変異解析など多岐にわたって使用されるようになった.特にこのコンパニオン診断における治療標的分子の検索は,固定からパラフィン包埋までのプロセスやブロックの保管方法において,適切な条件で処理することが求められる.すなわちこのFFPE検体の作製プロセスや保管方法について誤った処理が加わると,その後の分子レベルでの正確な診断や治療において重大な問題を引き起こし,患者自身のQOL(quality of life)に大きな支障が生じてしまう.したがって,本稿ではFFPE検体の適切な作製・保管の際の留意点について解説する.
ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)検体とは,文字通りホルマリンで固定した検体を脱水脱脂後パラフィンへと置換し包埋処理をした検体のことで,病理診断を目的とした検査室で最も広く用いられている処理方法である.
このFFPE検体は,薄切後のヘマトキシリン・エオジン(hematoxylin-eosin:HE)染色や特殊染色を用いて形態学を基にした従来の病理診断,また免疫組織化学染色(免疫染色)やFISH(fluorescence in situ hybridization)法などを用いた分子病理診断に使用されてきた.近年ではその利用目的がさらに広がり,コンパニオン診断を目的とした免疫染色やFISH法,遺伝子変異解析など多岐にわたって使用されるようになった.特にこのコンパニオン診断における治療標的分子の検索は,固定からパラフィン包埋までのプロセスやブロックの保管方法において,適切な条件で処理することが求められる.すなわちこのFFPE検体の作製プロセスや保管方法について誤った処理が加わると,その後の分子レベルでの正確な診断や治療において重大な問題を引き起こし,患者自身のQOL(quality of life)に大きな支障が生じてしまう.したがって,本稿ではFFPE検体の適切な作製・保管の際の留意点について解説する.
参考文献
1)日本病理学会:[実証データ①]固定までの時間・固定時間・ホルマリンの種類と濃度のDNAの品質に対する影響.日本病理学会(編):ゲノム研究用・診療用病理組織検体取扱い規程.羊土社,p96,2019
2)日本病理学会:[実証データ②]固定時間・ホルマリンの種類と濃度のDNAの品質に対する影響.日本病理学会(編):ゲノム研究用・診療用病理組織検体取扱い規程.羊土社,p97,2019
3)日本病理学会:[実証データ③]固定時間・ホルマリンの種類と濃度のRNAの品質に対する影響.日本病理学会(編):ゲノム研究用・診療用病理組織検体取扱い規程.羊土社,p98,2019
Dx Target Test マルチ CDxシステム 試薬キット添付書,第5版.ライフテクノロジーズジャパン,2019
CDx がんゲノムプロファイル検体作製ガイド.中外製薬,2020
NCCオンコパネルシステム 試薬キット添付書,第1版.シスメックス,2019
7)芹澤昭彦,宮嶋葉子,才荷翼,他:FFPE標本を用いた遺伝子検索における脱灰液の影響.医学検査 68:455-462,2019
8)日本臨床衛生検査技師会(監):JAMT技術教本シリーズ 病理検査技術教本.丸善出版,2017
9)河本陽子,石渡俊行,川原清子,他:病理技術 酵素抗体法に有用な未染標本保存法の検討.病理と臨 28:673-677,2010
10)日本病理学会:[実証データ⑪]未染標本の保存状態の免疫組織化学への影響.日本病理学会(編):ゲノム研究用・診療用病理組織検体取扱い規程.羊土社,p109,2019
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