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ALP測定試薬のJSCC法からIFCC法への切り替え—理解しておきたい特徴と変更に伴う注意点
著者: 宮本博康1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学附属病院中央検査部
ページ範囲:P.674 - P.678
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わが国では,1980年後半〜1990年頃にかけて酵素活性8項目〔AST(aspartate aminotransferase),ALT(alanine aminotransferase),ALP(alkaline phosphatase),LD(lactate dehydrogenase),CK(creatine kinase),γ-GT(γ-glutamyl transferase),ChE(cholinesterase),AMY(amylase)〕について,日本臨床化学会(Japan Society of Clinical Chemistry:JSCC)勧告法が作成された1〜3).
このJSCC勧告法では,国際生化学連合(International Union of Biochemistry:IUB)や国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine:IFCC)などの国際的な流れを重視し測定温度が30℃に設定されたが,汎用されている自動分析装置の測定温度は37℃であることから,1994年にJSCC勧告法の温度のみを37℃としたJSCC常用基準法(以下,JSCC法)が定められた.ただし,JSCC法は日常検査としての安定性や利便性を考慮していないため,実際にはJSCC勧告法に準じてトレーサブルな値となるように安定性や測定範囲を向上させ,非特異反応を低減させた液状化試薬が標準化対応法試薬として市販されている.
2019年の日本臨床衛生検査技師会臨床検査精度管理調査によると,この標準化対応法試薬は98%以上の施設で利用されており,国内での標準化により施設間差が解消された妥当性のある日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards:JCCLS)共用基準範囲も採用されつつある.
今般,JSCCを中心に,ALP測定試薬のJSCC法からIFCC標準測定法(以下,IFCC法)に準拠したものへの変更が進められているため,その切り替えに際して知っておくべき要点をまとめた.
わが国では,1980年後半〜1990年頃にかけて酵素活性8項目〔AST(aspartate aminotransferase),ALT(alanine aminotransferase),ALP(alkaline phosphatase),LD(lactate dehydrogenase),CK(creatine kinase),γ-GT(γ-glutamyl transferase),ChE(cholinesterase),AMY(amylase)〕について,日本臨床化学会(Japan Society of Clinical Chemistry:JSCC)勧告法が作成された1〜3).
このJSCC勧告法では,国際生化学連合(International Union of Biochemistry:IUB)や国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine:IFCC)などの国際的な流れを重視し測定温度が30℃に設定されたが,汎用されている自動分析装置の測定温度は37℃であることから,1994年にJSCC勧告法の温度のみを37℃としたJSCC常用基準法(以下,JSCC法)が定められた.ただし,JSCC法は日常検査としての安定性や利便性を考慮していないため,実際にはJSCC勧告法に準じてトレーサブルな値となるように安定性や測定範囲を向上させ,非特異反応を低減させた液状化試薬が標準化対応法試薬として市販されている.
2019年の日本臨床衛生検査技師会臨床検査精度管理調査によると,この標準化対応法試薬は98%以上の施設で利用されており,国内での標準化により施設間差が解消された妥当性のある日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards:JCCLS)共用基準範囲も採用されつつある.
今般,JSCCを中心に,ALP測定試薬のJSCC法からIFCC標準測定法(以下,IFCC法)に準拠したものへの変更が進められているため,その切り替えに際して知っておくべき要点をまとめた.
参考文献
1)日本臨床化学会:ヒト血清中酵素活性測定の勧告法—アルカリフォスファターゼ.臨化 19:209-236,1990
2)日本臨床化学会:血清中の酵素活性測定標準化の推進に関する指針.臨化 23:335-340,1994
3)Tietz NW, Rinker AD, Shaw LM : IFCC methods for the measurement of catalytic concentration of enzymes Part 5. IFCC method for alkaline phosphatase (orthophosphoric-monoester phosphohydrolase, alkaline optimum, EC 3.1.3.1). J Clin Chem Clin Biochem 21:731-748,1983
4)日本臨床化学会酵素・試薬専門委員会:血清アルカリホスファターゼ(ALP)活性測定のJSCC勧告法をIFCC標準測定法にトレーサブルな方法への変更に関する提案.臨化 46:138-145,2017
5)松下誠,入野勤,神山清志,他:血清アルカリホスファターゼ活性と血液型との関係.臨化 30:217-222,2001
6)山舘周恒,山崎浩和,荒木秀夫,他:ALP,LDの常用基準法改定について—国際的なハーモナイゼーション.医療と検機器・試薬 42:411-416,2019
7)日本臨床化学会:ALP,LDの測定方法の変更に関するご案内.2020(http://jscc-jp.gr.jp/)(2020年4月17日アクセス)
1)山舘周恒:JSCC勧告法は盤石か?—課題と展望 酵素項目(ALP,γ-GT).臨検 58:167-173,2014
2)山舘周恒,荒木秀夫,山崎浩和:ALP,LDのJSCC常用基準法をIFCC標準化対応法へ.東京都医学検査 47:160-168,2019
3)日本臨床化学会酵素・試薬専門委員会 ALPプロジェクト・LDプロジェクト:ALP・LD測定法変更について—医療従事者向け,ver. 1.0(2019.11.21)
4)日本臨床化学会酵素・試薬専門委員会 ALPプロジェクト・LDプロジェクト:ALP・LD測定法変更について—検査室実務者向け補足説明,ver. 1.0(2019.11.21)
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