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文献詳細

雑誌文献

検査と技術48巻9号

2020年09月発行

文献概要

増刊号 学会発表・論文執筆はもう怖くない! 臨床検査技師のための研究入門 2章 研究の進めかた

研究と論文の種類—研究デザインを決めよう

著者: 松田和之12

所属機関: 1信州大学学術研究院保健学系 2信州大学医学部保健学科検査技術科学専攻

ページ範囲:P.862 - P.868

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はじめに

 毎日のルーチン検査を通して抱く疑問,自身の学問的興味から抱く疑問,これらの疑問は,クリニカルクエスチョンやリサーチクエスチョンといえる.このようなさまざまな疑問を解決する,疑問に取り組むことがまさに“研究”である.しかし,“研究”は,高価な試薬,高価な装置を用いて,論文作成(英語・日本語)を行うことのみではない.

 毎日行っている検査業務中に何げなく感じる「ここをこうしたら,もっと検査しやすいのに……」というような運用・環境上の疑問であっても,「その疑問を上司に相談してみて,それを実行して(変化させて)みて,そして運用・環境が変わったか,その変更によってどんな影響が出たか,部内のミーティングで報告した」というように,疑問・問題点を洗い出す(はじめに)→方策を考える(方法・材料)→実行する(結果)→影響を考える(考察)という形で捉えてみると,これはまさに“研究的思考”そのものである.この研究的思考をすでに多くの人が経験しているはずである.さらに,部内ミーティングで報告までしていたとすれば,それは,いわば論文や学会発表と同様に自身の考えを他者に論理的に伝えることまで行っているのである.

 “研究”を始めるに際しては,「何か課題を見つけなければ」と焦るのではなく,普段感じる疑問を大切にすることがとても重要であると考える.しかし,疑問の解決に至った過程(成果)を公開する方法,つまり部内報告→学会発表→論文発表には公開の範囲(影響)と公開の時間に違いがある.公開の範囲は,部内報告では特定の施設内の人,学会発表は学会会場に来た人であるが,論文発表は多くはインターネットで不特定多数の人(もちろん興味のある人しか読まないが)に届けられる.さらに,公開の時間については,部内報告や学会発表は限られた時間内であるが,論文,特に英語論文などはPubMed上に半永久的に公開されてしまう.

 以上から,論文発表までを視野に入れた場合,論理性がとても重要になる.論理性を担保するためには,疑問を解決する手段,研究のデザイン,研究の成果をどのような形式の論文で発表するかについて,知識を得ておく必要がある.本稿では,研究デザインと論文形式の種類について主なものを概説する.

参考文献

1)小島原典子,中山健夫,森實敏夫,他(編):Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017.公益財団法人日本医療機能評価機構,2017
2)日本臨床検査医学会ガイドライン作成委員会:臨床検査のガイドラインJSLM 2018—検査値アプローチ/症侯/疾患.日本臨床検査医学会,2018
3)日本臨床検査医学会:臨床検査を終了した検体の業務,教育,研究のための使用について—日本臨床検査医学会の見解(https://www.jslm.org/committees/ethic/zanyokentai20171223.pdf)(2020年5月14日アクセス)
4)日本臨床衛生検査技師会:「医学検査」論文作成投稿要領.2017(https://www.jamt.or.jp/books/medical_test/pdf/contribution.pdf?20171127)(2020年6月29日アクセス)
5)医学書院:臨床検査 投稿規定.2019(http://www.igaku-shoin.co.jp/mag/toukodir/rkensa.html)(2020年6月29日アクセス)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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