検査と技術49巻1号

2021年01月発行

技術講座 生理

心電図を読む：見逃してはならない波形

著者： 桝谷直司¹

所属機関： ¹東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

ページ範囲：P.40 - P.46

Point

●心臓突然死の原因は致死性不整脈によるものが多く，重篤な不整脈や虚血性変化に移行しやすい状態の心電図波形を見逃さないことが重要である．

●不整脈原性右室心筋症（ARVC）はQRS終末部からT波の間にイプシロン波（ε波）を認めるが，低振幅のため見落としがちで注視する必要がある．

●健常者にもよくみられる早期再分極（J波）を伴う心室細動（VF）症例が報告され，早期再分極症候群（ERS）という疾患概念が提唱されている．

●検査時の心電図所見以外にも胸部症状なども重要な情報となるため，有所見時は患者より症状などを聴取することが心電図診断の一助となることもある．

参考文献

1）日本循環器学会，日本冠疾患学会，日本胸部外科学会，他：心臓突然死の予知と予防法のガイドライン（2010年改訂版）（https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2010aizawa.h.pdf）（2020年10月20日アクセス）

2）山科章：導出18誘導心電図．心臓　44：757-759，2012

3）日本循環器学会，日本心臓病学会，日本不整脈心電学会：遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン（2017年改訂版）（https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_aonuma_h.pdf）（2020年10月20日アクセス）

4）水牧功一：Brugada症候群．池田隆徳（編）：不整脈診療Skill Upマニュアル．羊土社，pp242-250，2008

5）Antzelevitch C：The Brugada syndrome: diagnostic criteria and cellular mechanisms. Eur Heart J　22：356-363，2001

6）桝谷直司：心電図の追加記録（右側誘導や1肋間上記録など）と，その理由について教えてください．臨検　61：524-525，2017