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文献詳細

雑誌文献

検査と技術49巻2号

2021年02月発行

文献概要

臨床検査のピットフォール

甲状腺・好酸性細胞腫瘍:細胞診におけるピットフォール

著者: 亀山香織12 佐々木栄司2

所属機関: 1昭和大学横浜市北部病院臨床病理診断科 2昭和大学横浜市北部病院甲状腺センター

ページ範囲:P.146 - P.149

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はじめに

 甲状腺細胞診を行っていくうえで濾胞性病変は最も正診率が低く,観察者間の意見の相違の大きい分野である.「甲状腺癌取扱い規約 第8版」では,“細胞学的所見のみから濾胞癌と濾胞腺腫を区別することは困難”であると記載されている1).しかし,われわれのグループでは以前より,細胞診で濾胞性腫瘍を疑った場合に採取された細胞量,細胞重積,細胞異型から,favor benign,borderline,favor malignantの3カテゴリーに亜分類し2),その後の治療の判断材料の1つとしている.この方式は日本甲状腺学会で作成した「甲状腺結節取扱い診療ガイドライン」3〜5)でも採用されている.一方,好酸性濾胞性腫瘍では通常のタイプと比べ濾胞構造をとることが少なく,核が濃染傾向にあり,良性病変であっても少なからず核異型が認められるといった組織学的特徴があるため,通常の濾胞性腫瘍とは異なる細胞診断の基準が必要となる6)

 甲状腺濾胞性腫瘍のなかで,好酸性細胞が腫瘍の大部分(75%)を占める亜型を好酸性濾胞性腫瘍と呼び,さらに腺腫と癌に分類される.一方,好酸性細胞の出現する疾患はBasedow病,慢性甲状腺炎,腺腫様甲状腺腫(結節),濾胞腺腫,濾胞癌,乳頭癌(まれ),髄様癌(まれ)など多岐にわたる.

 甲状腺細胞診において,好酸性細胞腫瘍はいまだ未開の分野である.教科書でも好酸性細胞型の濾胞性腫瘍の代表的な写真の記載はあるものの,良悪の鑑別については述べていないのが一般的である.したがって細胞診で好酸性細胞が認められた際,多くの施設では意義不明あるいは濾胞性腫瘍疑い,または鑑別困難といった報告を,“格別の根拠もなく”行っているのが現状であろう.しかし,好酸性細胞が出現する疾患は,単にいつも鑑別困難としていては細胞診を行う意味がない.本稿では,細胞診報告が少しでも臨床に寄与することを目的に,遭遇する機会の多いと思われる腺腫様甲状腺腫と好酸性細胞型濾胞腺腫,好酸性細胞型濾胞癌について,われわれが行っている鑑別法を述べる.

参考文献

1)日本内分泌外科学会,日本甲状腺病理学会(編):甲状腺癌取扱い規約 第8版.金原出版,2019
2)藤澤俊道,森光理絵,平木朋子,他:甲状腺濾胞性腫瘍の診断基準と診断精度—伊藤病院での検討.日臨細胞会誌 49:42-47,2010
3)日本甲状腺学会(編):甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013.南江堂,2013
4)Kakudo K, Kameyama K, Miyauchi A, et al : Introducing the reporting system for thyroid fine-needle aspiration cytology according to the new guidelines of the Japan Thyroid Association. Endocr J 61:539-552,2014
5)Kameyama K, Sasaki E, Sugino K, et al : The Japanese Thyroid Association reporting system of thyroid aspiration cytology and experience from a high-volume center, especially in indeterminate category. J Basic Clin Med 4:70-74,2015
6)亀山香織:好酸性細胞腫瘍と細胞診.病理と臨 38:130-133,2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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