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文献詳細

雑誌文献

検査と技術49巻5号

2021年05月発行

文献概要

FOCUS

真菌に魅せられて

著者: 槇村浩一1

所属機関: 1帝京大学大学院医学研究科医真菌学宇宙環境医学

ページ範囲:P.562 - P.568

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はじめに

 わが国の日常臨床で遭遇する微生物のなかで,真菌はとりわけ多様であり,またおのおのユニークな美しい形態(通常“顔”と表現する)を楽しめる病原体である.そのうえ,真菌は病原体としても,有用,または環境微生物としてもわれわれに最も身近な存在に違いない.

 けれども不思議なことに,真菌(カビ,酵母,およびキノコ)については,初等中等教育のみならず,専門的にも十分な教育がなされることもなく,わかったようでありながらほぼ理解されていない生物群であるのも事実である.わが国のみならず国際的にも,多くの病原微生物学の教科書をひもとくと,真菌の記載のみが微生物学的な分類学に基づいたものではなく,“深在性真菌症原因菌”,“表在性真菌症原因菌”,および“深部表在性真菌症原因菌”などといった,疾病からの視点に基づいていることにお気づきだろうか? なぜか医真菌学だけが,微生物学ではなく感染症学・皮膚科学の視点で議論されている.

 この状況は基礎医真菌学研究者としては甚だ残念なことであるので,遅まきながら本稿では,手始めに,いままでスポットライトが当てられてこなかった微生物としての“真菌”を博物的に楽しみ,親しみ,理解するための方法をいくつか提示したい.

参考文献

1)槇村浩一:医真菌100種—臨床で見逃していたカビたち.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2019
2)矢﨑裕規,島野智之:真核生物の高次分類体系の改定—Adl et al.(2019)について.タクサ 48:71-83,2020
3)Adl SM, Bass D, Lane CE, et al : Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes. J Eukaryot Microbiol 66:4-119,2019
4)Woese CR, Kandler O, Wheelis ML : Towards a natural system of organisms : proposal for the domains Archaea, Bacteria, and Eucarya. Proc Natl Acad Sci USA 87:4576-4579,1990
5)Hibbett DS, Binder M, Bischoff JF, et al : A higher-level phylogenetic classification of the Fungi. Mycol Res 111:509-547,2007
6)Spatafora JW, Chang Y, Benny GL, et al : A phylum-level phylogenetic classification of zygomycete fungi based on genome-scale data. Mycologia 108:1028-1046,2016
Spatafora JW. et al. (2016) : A phylum-level phylogenetic classification of zygomycete fungi based on genome-scale data. Mycologia,108:1028-1046.
7)日本植物分類学会国際命名規約邦訳委員会:国際藻類・菌類・植物命名規約(メルボルン規約)2012 日本語版.北隆館,p233,2014
8)日本植物分類学会国際命名規約邦訳委員会:国際藻類・菌類・植物命名規約(深圳規約)2018 日本語版.北隆館,p253,2019
9)MycoBankデータベース(https://www.mycobank.org/)(2021年2月8日アクセス)
10)勝本謙:菌学ラテン語と命名法(電子版).日本菌学会関東支部会,2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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