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文献詳細

雑誌文献

検査と技術5巻12号

1977年12月発行

文献概要

最近の検査技術

細菌の運動性試験と鞭毛染色

著者: 藪内英子1

所属機関: 1関西医大微生物

ページ範囲:P.926 - P.928

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 私たちが細菌の性状を調べる場合,その結果は陽性と陰性,あるいはプラスとマイナスで表現される.言い換えればある構造物を備えているかどうか,ある反応を示す能力があるかどうかを判断して表示しなければならない.ある性質について明瞭な陽性と明瞭な陰性というのは両極端であり,その中間に種々の移行型が介在する.従ってある性質について陽性群と陰性群を単純明快に区別しえないことも少なくない.また技術的な問題のために判定の困難な場合もある.
 細菌の運動性試験と鞭毛染色についても同じことが言える.細菌を同定する際に,被検菌の運動性の有無はグラム染色性に次いで重要な意味を持つ.鞭毛の形態,すなわちその位置,数,波形は属の同定及び属内での種の同定に必要であり,時には不可欠である.例えば水素を酸化してエネルギーを得ることのできるhydrogen bacteriaの一種でPseudomonas ruhlandiiと命名されていた菌種は,周毛であることが分かったため最近Alcaligenes属に移されAlcaligenes ruhlandiiとなった1).このような事実は一面から見れば,既に命名されているすべての菌種の運動性と鞭毛形態についての記載が必ずしも完壁ではないことを現しているが,他方ではLeifsonの力説2)に呼応して鞭毛形態の重要性に対する細菌学者の認識が高まったことを示していると言えるだろう.現に我が国でも細菌の分類同定に鞭毛の位置と数が有用な鍵になるという考えが普及し,鞭毛染色を日常検査に取り入れている検査室,あるいは必要に応じて随時鞭毛染色を実施できる検査室が多くなった.鞭毛を染色することはもはや特殊な技術ではなくなった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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